できない人に向き合う

誰でもすぐに戦力になれる未来食堂で働きませんか ゆるいつながりで最強のチームをつくる

 つづきです。今度は「相手が思うように成長しないケース」について。

 きれいごとではなく、どうすればできるかを現実的に考える、こういうことが本当の親切なのかな、と思いました。

 

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▼対策① 相手に期待しない精神を磨く

 未来食堂の「まかない」にはいろいろな人が来ます。・・・開業当初は、覚えの悪いまかないさんに対してついイライラする自分がいました。しかし日々、「こんなこともできない人は、まさかいないだろう」というレベルまで期待値を下げても、必ずそれを下回る出来事が起こるのです。

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 もちろんここで言いたいのは、「できない人=ダメな人」ということではありません。その人にとって不慣れなタスクを割り当ててしまい、その人がこなせなかったばかりに、その人そのものを〝できない人〟と責めるのは、誤りです。

〝人そのもの/能力〟をきちんと分けて考えないと、『人を嫌いになりたくないから、皆を良い人だと思いたいから、自分が期待している能力を皆が持っていて欲しい』と、無意識に人に期待をしてしまいます。それは良いリーダーではありません。

 ・・・さまざまな能力差と接するうちに、私はいつしか「生きていたらいい。『まかない』が終わって、五体満足で未来食堂のドアをくぐって帰ってくれたらそれでいい」と思うようになりました。

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▼対策② 具体的な仕組みでサポートする

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 ・・・忙しくなると手を拭くのを忘れてしまうまかないさんがいました。何度も「床が汚れるので、手を拭いて移動してください」と言うのですが、忙しくなるとすぐ幽霊のように両手をぶら下げながらウロウロしてしまうのです。何度も言って癖づけてもらおうとしてもダメでした。そこで、そのまかないさんにはエプロンにタオルを付けてもらう〝仕組み〟をつくりました。すると、手を拭くタオルが身近にあることで、もう床を濡らすことはなくなったのです。

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 手を拭かない人に専用のタオルを用意する。当たり前ですよね。しかし・・・

他の皆ができているとしても、その事実はいったん忘れて、できない1%の人に向き合って相応の〝仕組み〟をつくることが必要なのです。・・・

 できない相手を責めるのではなく、「皆できているからあなたも合わせろ」ではなく、「自分がどう工夫すれば、この人が作業しやすくなるだろうか」を考えることが大切です。

 未来食堂はさまざまな人に「初めて来たけど働きやすい」と言われます。しかし具体的には・・・些細な〝仕組み〟が積み重なっているにすぎません。

 崇高な思想/理念は何の役にも立ちません。具体的な仕組みをどれだけつくったかで、働きやすさは決まるのです。

「できない人を切り捨てるのではなく、どうやったら参加できるだろうか」と考えること・・・、考えた結果を〝仕組み〟としてつくり出すことが、大切です。