この「予想がつかない状況では、相手の立場で考える」というのは、たくさんの場面で役立つことだなと思いました。
P122
今でこそ宇宙飛行士選抜試験の様子もかなり知られるようになりましたが、私が受験したころはほとんど情報がありませんでした。しかも、医師だった私はいわゆる就職試験のようなものが初めてで勝手が全く分かりません。様々な意味で、まさに「予想がつかない」状況でした。
・・・試験項目には「基礎的な専門知識」とあるだけで、具体的にどういった分野の問題が出されるのか分かりません。
・・・そこで、私は「できなくて当たり前」という状態で、八方ふさがりの「自分の立場で」考えることをいったんやめ、逆に「自分が試験官だったらどんな能力を問うだろうか」と「相手の立場で」考えてみました。
前提として、「試験官は日本の宇宙飛行士にどういう振る舞いを期待しているのか」「その実現のために、宇宙飛行士を選抜する立場として受験者に何を求めているのか」。そして、「どういう試験を行えば、その資質を確認することができるのか」。試験官の目で、自分を含む受験者を見てみました。
まずは「とにかく、一般常識は必要だろう」と考えました。常識のない宇宙飛行士が宇宙で活躍できるとは思えません。・・・また、今回選抜される宇宙飛行士は国際宇宙ステーションで滞在することを目的としていることから、各国の宇宙飛行士とうまく連携することは当然として、日本の代表として「漢字や熟語も正しく理解していないといけない」と、改めて勉強しなおしました。
また、「基礎的な専門知識」についても、「専門知識」といえば私にとっては「医学」ですが、医者だけを対象としているわけではないので、医学が専門知識として問題に出るわけではありません。
すると、ここでいう専門知識とは皆に共通のものではないか、と考えました。具体的には数学や化学・物理、生物・地学などについて出るのではないかと予想しながら、自分なりに対策を進めました。
・・・
予想がつかない状況になったとき、「相手の視点」で自分を見るということは、振り返れば高校時代の野球部での経験から学んだことかもしれません。
・・・相手チームからは、自分のチームがどう見えるか。・・・相手がいる場合、こういった手法はとても有効です。