未来対談

為末大の未来対談―僕たちの可能性ととりあえずの限界の話をしよう

 こちらは異才発掘プロジェクトROCKETのディレクターをしている中邑教授との対談で、「好きにやりたい人を育てようとしてはならない、育てるのではなく潰さない」というお話、興味深かったです。

 

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為末 中邑先生自身は、子どもの頃、どんな感じだったんですか。

 

中邑 私も変わった子だったみたいです。家族から「横口出す夫」ってあだ名を付けられて。お客さんが来るのが大好きで、親父と一緒に居間に座って、お客さんに横からしゃべり出す。・・・でも「お前、そんなことやっちゃだめだ」とは言われなかったんです。そこで否定されていたらすごくつらかっただろうなと思うんです。そういう自分らしいところを否定されない場をつくりたいという思いが今やっていることともつながっているんでしょうね。

 

為末 「好きにやりたい子たち」を認めてあげるということですね。実際ROCKETで、・・・どんな教育をしているのか、改めてお聞きします。

 

中邑 まず、教科書はありません。安全を確保するために最低限必要なことは教えますが、それだけです。

 この前は、「よし、イカ食うぞ」って、・・・「食うんだから、思うように切れ!」って言うと、縦に切る子もいれば、横に切る子もいる。いろんな切り方をして、実際イカを焼いてみると、筋繊維の方向によって、反ったり丸まったり、焼き姿が違ってくるんです。

 これを最初から、「イカを焼くから、みんな串に刺して」と画一的に教えていたら、何も変化が起きませんからね。

 

為末 最初から教えないで考えさせるということですね。ほかにも大切にしていることはありますか。

 

中邑 時間制限を設けないことですね。お昼ごはんを2時過ぎに食べている子もいます。あの子たちは、ひとつのことに取り組むと「もう、それしか見えない」という状態になります。それを「はい、ここまで。ご飯の時間だから」としてしまっては、何も残りません。

 時間も気にせずに、好きなことに集中することのできる場は、世の中に必要なのではないか。そういう場から、生まれてくるものもあると思います。

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 ・・・ROCKETに参加してもらっているデザイナーの鈴木康広さんが、「僕は今大学で教えているけれど、先生って決まった時間に教室に行かなきゃいけないんですね」って言うんです。「当たり前じゃん」と返すと、「それがつらくて。僕、朝起きたら『今日はなにしようかな』って考えて、『これにしよう』って思ってから初めて動き出すもので」って言うんです。「そんな生活を30年以上やってきたの?」って聞くと「はい」って(笑)。

 ・・・

為末 気持ちはわかりますね。立てた予定をこなすのではなく、その時の自分の発想に素直でいるほうが大事っていう気分になるんですよね。

 

中邑 会社だと「なんで今日、来ないの?」って聞かれて「今日は気が向かないので」って返事するようなものか(笑)。でも、そうやって生きるからこそ、すごい能力を発揮できる人もいるってことだと思います。

 

 ここに出てきたデザイナーの鈴木康広さんの記事がありました↓

科学の大発見にアートは必要か? | Rocket

 あの「ファスナーの船」の方だったんですね。うわ~面白い!って思ったのを覚えています。