興味深い対談

なんで家族を続けるの? (文春新書)

 内田也哉子さんと中野信子さんの対談。

 へぇ~と知らなかったことも、そんな考え方するんだという驚きもあり、読んでよかったです。

 

P197

中野 ・・・私の場合は、私って本当に暗くて冷たい嫌な人間だわって感じたりするときに逆説的に、あ、ちょっといいかもと思うことがあってね。私は、性格としてネガティブなところを感じることのほうがリアリティがあって、ハッピーでイケイケドンドンというときよりも好きなのよね。

 

内田 あ、それ、うちのダンナさんと同じだ。

 ・・・

 そういう傾向がものすごく強い。心の中にはネガティブなものをとらえる性質を持っていて、それも嫌いではないのよね。

 

中野 むしろ自分のそこが好き。苦いコーヒーが好きみたいな感じ。つらい側面もあるけど、それがないとおいしくない。

 

内田 なるほど。それはある意味、ものすごくポジティブということかもしれませんね。だからこそ、ネガティブ、つまり下から始める。

 

中野 ああ、そうなのかもね。下がったところから上を見た、その景色が好きなんだと思う。・・・

 

内田 夫がネガティブ過ぎて、私はそれに引っ張られるのね。私はわりと表面的なポジティブをいっぱい感じていたいんだけど。夫はまずは自己否定から始まる。中野さんは自己否定はしない?

 

中野 するする。すごいする。こんなんじゃダメだ、ぜんぜんダメだと思うことはしょっちゅうある。でも、それは也哉子さんの分析どおり、いったん下に下がるという戦略をとっているということなんでしょうね。

 ・・・

内田 でも、生活を共にする者としては、私はあからさまに共感したいタイプだから。「このココアおいしいよね」「そうだね」って一気に盛り上がりたいのだけれど、夫は「でも、シナモンを入れたらもっとおいしいかもしれないのに」って言うタイプなのですよ。べつにそれでも良いのだけれど、ワンクッション入ることでちょっとリズムが崩れる。あまり人が「おいしい」を連発すると、「それってホントにそこまでおいしい?」っていう疑問が膨らんでしまうっていうんです。自分のペースでおいしさを感じたいって(笑)。

 ・・・

 そこまで自分のエクスペクテーション(期待値)には達していないとかって言われちゃうと、そんなこと言ったら果てしないじゃない、いつまでたっても幸せって言えないよっていう気持ちに私はなってしまう。だから、そんな夫を少しは楽観的に変わらせようと誘導しているんだけど、なかなか変わらない。

 

中野 しょうがないね(笑)。そういうタイプの人―私もそこまでストイックではないものの、傾向としてはそうなんだけど、ここのP点の状態がすごく不快なんです。

 

内田 幸せグラフの頂点なのに。・・・やっぱり中野さん、そういう思考は本木にそっくりです。賞をいただいたりしても、一秒たりとも「よかったね」にならないんだから。・・・

 

中野 わかる。うれしくないんだよね。「これは一時的な評価だ」と思ってしまって。

 

内田 うわ~、つらい。たまには褒めてあげようよ、自分のことを(笑)。

 

中野 そうだね。たまには褒めてあげる練習もしよう(笑)。でもやっぱり、「ああ、今ちょっとダメかな」という・・・局面で、自分のここがダメなんだと気づくときがいいな。ここを直せば私は今までよりステップアップできるぞーっていう感じが好きで、いちばん幸せ。・・・

 

内田 ・・・ということは、私のような「ああ、よかった」で満足して終わっちゃう人は、それ以上ステップアップしていかないということなのかな。

 

中野 ・・・人間の戦略は多様であることが大事だから、いろいろな人がいるほうがいいんです。頂点で「よかった」と思える人がいてこそ、「よくなかった」と思える人の価値があるのだし。ちなみに私の夫も也哉子さんのように頂点で素直に「よかった」と、それしか思わないタイプです。