未来食堂の理念

やりたいことがある人は未来食堂に来てください――「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法

 この本を書いている時は第二子妊娠中だったというせかいさん。

 でも、お店についての取材を受ける時は「母として頑張る」「ママ起業家」などという意図していないラベルがつけられることを避けるために、そのことは公表せずにいたということです。

 日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞した時、この「女性に与えられる賞の中で、女性性になびかない姿勢を表現することは、閉塞感を感じている大勢の女性に励ましのメッセージとなる」のではないかと考え、このようなスピーチをしたとのこと。

 この分量の中で、なんとバランスよく、考え方や姿勢、メッセージを伝えているんだろうと驚きました。

 

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 このたび、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーという、大変大きな賞をいただいたことにとても意味を感じています。

 私自身は小さな人間で、未来食堂も12席だけの小さな定食屋です。

 私自身が受賞に値するとは思えませんが、この賞は、私のように世の中の〝こうあるべき〟という姿に立ち向かい、今まで誰も見たことがないような新しい世界を産み出していく、そんな孤独な戦いに明け暮れている方の代理として、本日、いただきに参りました。

 このように著名な賞をいただくことを、私は大きな試練だと考えています。

 なぜなら、未来食堂、そして私の理念は、『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』。

 未来食堂は最後のセーフティネットとして、ただただ『あなた』のためにある場所です。

 しかしそんな小さな場所を理念とする私が、このような賞を受賞し、一度有名人になる快楽に溺れてしまえば、あっという間に『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』という理念は変質してしまうのではないでしょうか。

 多くの人に「未来食堂は良い」と思われたからこそ、今日、この場に立つことができました。

 しかし、それは目的ではなく、結果にすぎません。

『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』に向かう私の小さな足取りは、このように大きな賞賛の爆風によって今にも吹き飛ばされそうです。

 私のように小さな人間に、このような大きな試練が与えられたことに、心から感謝いたします。

 最後に一言だけお伝えしたいことがあります。

 私は、未来食堂を始めるために会社を辞め、パートやアルバイトをしながら修行を重ねました。

 そんな過程を報道で知った方から、「そうやって気ままにチャレンジできるのも独身だから」といったコメントをいただくことがよくあります。

 しかしそれは違います。

 私は結婚しており、6歳の子どもがいて、今妊娠5ヵ月目です。

「こんなチャレンジができるのは独身だから」という発言に、私はNOと答えます。

 しかし私は、母であることに自分のアイデンティティはありません。

 ですので、これ以上のコメントは特にありません。

 環境が、あなたの行動にブレーキをかけるのではありません。

 あなたの行動にブレーキをかけるのは、ただ一つ、あなたの心だけなのです。