本を読んだ後に・・・

絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える

「ココアどこ わたしはゴマだれ」にこの本が出てきて、興味を持って読みました。

 デザインについてのお話も、こんなお話も面白かったです。

 以前読んだことのある「世界を、こんなふうに見てごらん」

ayadora.hatenablog.com

という本を寄藤さんが読んで、こんな風に思ったそうです。

 

P171

 読んだ後、自分がものすごく大切なことを教わったと感じているけれども、それがなんなのかよくわからないという本がある。しかも、それが実感として理解できるまでに何ヵ月とか何年とかすごく時間がかかる。すぐに良いと思える本は、実はすでに自分が知っていることを確認した本だったり、単純に役に立ちやすい知識が書いてある場合だったりするが、この本はそのどちらでもない。おそらく、これから知るにちがいないことが書いてあるのだろう。だから、この本がどのように良い本なのか僕には説明ができない。ただ、ものすごいビッグな本であることは間違いないと思う。そんなわけなので、書評もできない。

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 広告でも装丁でも、デザインの仕事には「これって本当に世の中に必要な仕事なんだろうか?」という一抹の不安がつきまとっている。たとえば広告によって商品が売れても「それで誰か幸せになるんだろうか」とか、装丁を気に入って自分の本棚に納めてくれる人がいても「それが、その人の人生にとって本質的に価値があるのか?」とか考えてしまう。自分の仕事がなんとなくいつも後ろめたい。

 科学者といえば真理を追究し、しかも日高せんせいはいろいろな新事実を発見された方である。きっと自分の仕事に確信を持っているに違いないと思ったら、そういうものではないようだ。

「人間はイリュージョンなしには生きられない」

 このメッセージは本書の中で繰り返し語られている。人間は論理が通ってしまうと、見たことがなくても、ありもしないものでも現実だと思い込んでしまう動物なのだという。日高先生にとって、科学もまたそのようなイリュージョンのひとつなのだ。科学者として科学を考えるほど、科学的であることに疑問を深めていく感じは、内容は違うけど、僕にもちょっとわかる気がした。

 僕が特にビッグなものを感じたのは、人間がイリュージョンなしに生きられない動物だとした上で「どのようなイリュージョンを作るのかを考えるより、人間がそういう動物であるということを面白がってはどうか」というくだりだ。これが具体的にどういう感覚なのか僕にはよくわからないけど、これまで感じてきた自分の仕事への後ろめたさがシュバーッと消えていく感じがした。とにかく今は、「この言葉はすごいビッグだ」というモワモワだけがある。