このお話も、こういうことある!と、印象に残りました。
P180
小学校の算数で、少数の掛け算がわからなかった。つまずいたのは「0.1を掛ける」という言葉だった。
それまで、2に3を掛けるのは、2を3回足すことだと教わっていた。その理屈だと3に0.1を掛けるというのは、3を0.1回足すことになる。0.1回足すとはどういうことか?
・・・
あるとき授業で先生に質問した。すると先生は黒板に1本の線を引いた。「これが1だ」。それはわかる。「これに0.1を掛けると……」と先端をすこし残して線を消した。「ほら、0.1だ」
僕には先生の言っている意味が、まったくわからなかった。すくなくとも0.1回は足しているんだから、増えなければおかしい。
「掛けてるのになぜ減るんですか?」
先生は、「だーかーらー!」といって、・・・さっきとまったく同じ解説をし、・・・僕は「わかりません」と答えた。・・・
・・・
0.1を掛けたら10分の1になる。そのルールは知っていた。僕がわからなかったのは、それを、頭の中でどういうふうに想像すればいいのかっていうことだった。
「足し算は線、掛け算は面でしょ?」
これを教えてくれたのは妹である。
2×3を、2+2+2と考えるとき、僕は頭の中では2が直線上に3つ並んだところを想像していた。でも掛け算の場合、横に並んだ2が、縦に3つ積まれているというふうに想像するべきなのだった。
2掛ける0.1は、横に並んだ2が縦に0.1積まれているのだから、0.1+0.1で、0.2になると想像できる。2×3と3×2の答えが同じになる理由もスッキリつながる。
数学の解釈として正しいかどうかは知らないけれど、あのとき、僕が求めていた答えはそういうことだった。