宮城の人と大阪の人

SWITCHインタビュー 達人達 宮藤官九郎 × 葉加瀬太郎 (SWITCHインタビュー達人達)

 このお二人の対談も、最初から最後まで面白かったです♪

 

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葉加瀬 ・・・僕がやったときの『てっぱん』は、尾道だったり大阪だったり、作品ごとに舞台になった町にスポットが当たるじゃないですか。『あまちゃん』の場合も、やっぱり岩手を意識して書いたんですか?

 

宮藤 台詞を書いているときに、田舎にいる人たちの意識というか、自分の田舎に対する思いみたいなものは結構意識しましたね。僕も東北、宮城県出身なので、宮城にいたときの地元に対する距離感っていうのを思い出して……宮城の人たちって、自分の住んでいる町のことは、あんまりよく言わないんですよ。「何もなくてすみませんね」とか「寒いでしょう?」とか、悪いところばっかり言うんですけど、外の人が悪いことを言うとカチンとくるんですよね。うちの地元を何だと思っているんだって。

 

葉加瀬 なるほど。

 

宮藤 「東北って何もないですよね」とか言われると、「いや、そんなことねえよ」と思ったりするんですけど、自分たちは「何もないでしょ?」と言う。その感覚は、ドラマ全体に行きわたっていますね。そういう人たちばっかり出てくるというか、基本的にそう思っているというか……何なんでしょうね(笑)。誇りを持っているくせに、持っていないふりをするっていう。

 

葉加瀬 それが「奥ゆかしさ」なんじゃないですか。

 

宮藤 葉加瀬さんは関西出身ですよね。そのあたりはどうですか?

 

葉加瀬 僕は大阪出身だから、まったく逆です(笑)。

・・・

宮藤 「大阪人」の葉加瀬太郎は、どんな感じなんですか?

 

葉加瀬 要するに、大阪のあいさつって、「こんにちは」が「もうかりまっか?」になるわけじゃないですか。あれ、ギャグじゃなくて本当の話ですから(笑)。

 

宮藤 もうかっているかもうかってないかを、みんな気にして生きているんですね(笑)。

 

葉加瀬 気にするというか、それがあいさつなんですよ。「お元気ですか?」の代わりに「最近、もうかってまっか?」って言って、「ぼちぼちですわ」、「いや、そんなこと言うたって、最近、結構聞きまっせ」みたいに続くわけです。

 

宮藤 そこから入るんですもんね。でも、東北の人からしたら、それがいちばん最後ですよ。いちばん腹を割った人にやっと「俺、もうかってるんですよ」って小さな声で言います。

 

葉加瀬 小さい声で(笑)。

 

宮藤 もう口の動きだけで言いますよ、声は出さずに。

 

葉加瀬 (笑)。そう、うちの事務所のボスが関西の人なんですけど、「今日、きれいな服着てますね」って言ったら「いやあ、これ安物。セールですわ」って、必ず値段から言うんです。いかに安い値段で買ったかっていう……そこのプライオリティーが高いわけですよ。ご飯とかでも同じで「美味しいやろ?これ、めっちゃ安いねん」って、こうくるわけです(笑)。その2つがもうセットなんですよね。

 

宮藤 高いものを着ていることよりも、それを安く買ったことのほうが自慢なんですね。

 

葉加瀬 そうそう(笑)。

 ・・・

 ・・・僕は音楽家として、それを割と拒否しているところがあるんですよね。やっぱり、予算とか関係なく、ものづくりをしたいというか。標準語でしゃべっているときは、そういうマインドになれるんですけど、関西弁で話すと「いちばん安いスタジオ、探したろ。そんなもん一緒やろ。録れる録れる」ってなって来るんですよね(笑)。

 

宮藤 (笑)。

 

葉加瀬 「若いやつ使おうや。ギャラ半分やろ?よっしゃよっしゃ」っていうマインドが出てきてしまって、自分のなかで倒錯するんですよね。

・・・

宮藤 じゃあ、葉加瀬さんがちょっとお金を使い過ぎているなと思ったら、まわりの人が関西弁で話しかけて、関西人の人格を呼び出せば、予算が安くすむっていうことですよね(笑)。

 

葉加瀬 そうでしょうね(笑)。