蛭子能収さん

死にたくない 一億総終活時代の人生観 (角川新書)

 蛭子能収さんの本です。

「死にたい」とも思わない反面、「死にたくない」とも、個人的にあまり思わないので、そうなんだーと興味を持って手にとりました。

 そんな風に考えたことないなーっていうところがたくさんあって、色々興味深かったです。

 

P45

 ・・・僕の仕事人としての歩みは、「時代の流れ」とかなり関係していると思っています。39歳のときにテレビ番組に呼ばれるようになったのも、「ヘタウマ」じゃないですけれど、素人っぽい人がたくさんテレビに出るようになったタイミングでした。素人っぽさがウケた時代の流れに、うまく乗っかったということなのかもしれません。

 もちろん、僕はそれを狙ってできるほど賢い頭脳を持っていないので、自分では「たまたまだ」と捉えています。ただ、なんとなく時代についていけているような時期に、ひとつ気づいた大切なことがありました。

 それは、「時代の流れにしがみつこうとすればするほど、時代についていけなくなる」ということです。あたりまえのことかもしれませんが、なにかにしがみついた途端、そんな態勢を柔軟に変えることはできなくなりますからね。

 ならば、どうすればいいのか?

 いつの時代の、ただ「いま」を楽しんでしまえばいい。

 そうすることで、どんな時代が来ても流れに乗っていける態勢でいられるし、たとえ乗れなかったとしても、毎日のその場その場が楽しく過ごせるわけです。

 

P77

「仕事内容にこだわりがない」なんて言うと、「芸能人でそこまで言い切れるなんて凄い」なんて言われることもあります。でもそれのなにが凄いのかが、自分ではまったく理解ができません。

 きっと僕にはプライドというものがないのでしょう。とにかく必死になって、お金をもらうためにがんばるのみ。だから、いまテレビの仕事がなにかのきっかけでまったくなくなったとしても、すぐにアルバイトに出るつもりだし、とにかくお金をくれるならなんでもやります。

 ・・・

 言ってしまえば、僕は「仕事の意味」や「仕事人の誇り」なんかいらないから、現金がほしいだけ。むかしのドラマじゃないけれど、同情するなら、現金がほしいのです。

 現金を見ると力がみなぎります。だから、下手なプライドは本当にまったくありません。とにかく、ご飯を食べるために働くこと。・・・

 でも、不思議なことに、そう考えて働いているほうが、仕事がうまく回っていくようです。いちいち余計な指摘をしたり、文句を言ったりしないから現場の進行もスムーズになるし、人間関係も円滑になっていくからかもしれません。

 だから、体が動くうちは、もう必死になって稼ぎたい。稼ぐ額が少なくても別に関係ありません。そんなもの誰と比べるわけでもないので、働いて、自分の力で生きていくことさえできればいい。これで、それなりに幸せな人生を送ることができています。