イマジン

神はテーブルクロス (幻冬舎文庫)

完璧の偽物ってすごいなと笑いながら読んでいたら、イマジンが流れてくるようなステキなオチが・・・

P169
 先日、友人と二人で韓国に旅行した。
 南大門市場という日本のアメ横みたいな場所に行ったときのことである。・・・そんななかでうっかり足を止めたりすると、売り込みの人が押し寄せてきて大変だ。僕らはなるべく足を止めないように市場を楽しんだ。
 ところが、ある客寄せの掛け声で僕らはピタリと足を止められてしまったのである。
「キムタクドケイアルヨ……マボロシノトケイヨ」
「キムタク時計!幻の時計!」
 僕は思わずその場で口ずさんでしまった。
 いったい何を根拠にしたキムタク時計なのか。その幻の時計とはいったい何なのか。僕の想像力はドクター・中松を凌駕した。
 そしてまた、しばらく歩いていると、また客寄せの声に足を止めてしまった。
「カンペキノニセモノアルヨ!」とおばちゃんが叫んだ。
「カンペキノニセモノ!カンペキノニセモノ!」と更に連呼する。
 たぶんおばちゃんが知っている数少ない日本語の一つが「完璧の偽物」なんだろうと、僕の心は温かいピュアな気持ちになった。
 何はともあれ、この旅行で美味しい韓国料理を食べることができたし、エネルギーを感じることができた。国内も良いが海外に行くと経験値が格段に上がる。そして帰りの飛行機のなか、お土産のキムチを見つめているとき、不意にインスピレーションがわき上がった。
「いつかは世界中の人々が海外をアウェーと呼ぶのではなく世界のどこでもホームと呼ぶ時代を造り上げよう」
 僕はキムチの香りとともに、自分のやるべき仕事を見いだした。