こんな人がいたとは、びっくりでした。
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古今、偉大な覚者や、悟りを得た人というのは大勢いますが、おそらく究極の悟りを得ただろうと思われるのは、大聖ラーマクリシュナです。・・・ラーマクリシュナ・パラマハンサ(一八三六~一八八六年)は、傑出した存在です。
・・・「生きて肉体を持った時点での悟り」を得たという点では、人類史上最も生々しく、最も迫力のある人が、このラーマクリシュナだと思います。
では、ラーマクリシュナはどうやって究極の存在に到達したのでしょうか。
ラーマクリシュナに「修行法」を伝えた人が何人かいます。一八五九年に彼のもとにやって来たシヴァ派のブラフマニという人は、タントラの秘法を彼に教えています。一八六六年にはトタプリーという出家がヴェーダーンタの奥義を、またヴィシュヌ派の学者がチャイタニヤの教えをラーマクリシュナに伝授しています。
そういったいろいろな修行法を教わる一方で、ラーマクリシュナ自身は、カーリーという女神を信仰しているヒンドゥー教徒でもありました。そのため、一八六三年と六八年の二回、インドの聖地巡りをしています。その間、ベナレスで宇宙の主神としてのシヴァ神と対面したり、ブリンダーバンでクリシュナ神と会ったりといった霊的体験をしています。しかし、それらはヒンドゥー教の神様ですから、凄い体験とはいっても、ヒンドゥー教徒のラーマクリシュナにとっては驚くほどのことではありません。
面白いのは、その先です。
・・・ラーマクリシュナはこう考えました。
「本当に真理が一つであるならば、どの宗教でも同じように、真理に到達する体験ができるのではないか」
彼は、他の宗教を信仰することを実践したのです。
一八六六年、ラーマクリシュナは、それまで自分が信仰していたヒンドゥー教をその段階で捨ててしまって、イスラム教徒になりました。イスラム教の修行を重ね、その結果、究極の体験としてアッラーを見るに至りました
さらに一八七四年には、今度はキリスト教徒になります。キリスト教徒として信仰生活を送った彼は、イエス・キリストと抱擁するという究極の体験をしています。こうしてラーマクリシュナは、「どんな宗教によっても同じ境地に至ることができる」ということを、身をもって体験しました。
言葉だけで「真理は一つ」などというのは簡単なことです。しかし、実際にいくつかの宗教で最高の体験をして、本当に「真理は一つ」ということを確認したのは、古今東西、ラーマクリシュナ以外に聞いたことがありません。