美輪明宏さんの人生、ものすごく濃いというか深いというか、試練ばかりというか、…圧倒されました。
一部抜粋するのが難しいので、ちょっとだけ書きとめておこうと思います。
P124
メジャーデビューの年に明宏は、当時ジャーナリストの大御所だった大宅壮一と週刊誌上で対談し、訳詞のポリシーについてこう語っている。
<向こうの言葉(引用者註・フランス語)で直接感じて、そのまま歌う場合は、作者の気持が自分にじかに感じられますね。同じ歌を、いろんな歌い方があるが、そのもとになる歌詞は作者の意図です。解釈の仕方はそれぞれ個人にできるでしょう。間に訳者が入った場合には、作者と詩の解釈の間に人の解釈が入ってくる。それが安っぽいものであれば安っぽくなるし、へんに高級でぎこちなければ、それもそのまま歌わなければならんので、それじゃあ困るから、まあぎこちなきゃぎこちないなりに、自分のカラーで訳して……。>(『娯楽よみうり』一九五七年八月九日号)
弱冠二十二歳でこれだけ堂々と確固たる訳詞のポリシーを語る明宏に対し、ジャーナリズムの大家は、軟弱な外見と骨太な中身のギャップを相当に感じたようだ。・・・
そして実際、明宏は、イヴ・モンタンの『毛皮のマリー』、ダミアの『暗い日曜日』、グロリア・ラッソの『ボン・ボワイヤージュ』など、十八番としている持ち歌はすべて自分の訳詞で歌った。・・・ここではピアフの『愛する権利』という歌の訳詞を紹介しよう。
この地球の常識など
愛の宇宙じゃ小さなもの
どこの国の神も法も
愛を禁じる権利はない
裁く事は出来やしないさ
人が人を愛する事は悪ではない罪ではない
男と女が
女と女が
男と男が
年寄りと若者が
異国人同士が愛し合っても
人間同士が愛し合う事に変わりはない
殺したわけでも
盗んだわけでもないのだから
人は誰も
幸福になる権利がある
私も又
孤独と闘い
人生に傷つき
血を流して
代償を払った
どんな力も奪えるものか
この権利を守り抜くのだ
やっと手にした愛の権利を
貴方を愛する権利を