勝ち続ける力

勝ち続ける力

羽生さんの本を続けて読んでみました。

 

P57

 ・・・いまはあまり重要でないことは、どんどん忘れた方がいいと思っているんです。記憶する努力よりも忘れる努力が必要ですね。努力しなくても忘れますけど、それでも、忘れていった方がいいという方に、私は重きを置いているんです。

 ・・・

 前例のようなものをすべてきれいさっぱり忘れるか、頭の片隅に置いておくぐらいにするか。まっさらな状態で、先入観なしで見ることが、一番重要でしょう。

 独創的な思考や、創造的な思考に頭を切りかえる時、記憶は足を引っ張りますね。どんなジャンルでも、だいたいとても若い人が画期的な発見をするでしょう。若い人は余栄なことを覚えていないからいいんです。なぜ、これをやっちゃあいけないのか、というふうに考えて、暗黙のルールのようなものにも縛られないでしょう。体が若いから、というだけで新しいものを見つけられるわけではないと思います。

 ・・・

 いまは、すべてのことを確率で決めようとするじゃないですか。どういうやり方をやれば一番勝つ確率が高いか、これは利益が出るかでも同じことですが。私は、計算可能な確立を上げていくという方法がベストだとは思っていないんです。

 データを集めて分析し、中で一番確率の高いものを選んでゆくという戦略は、まず、やっている本人が楽しくありません(笑)。それに、将棋に限らず、あらゆるジャンルでも、偶然性や不確定な要素がとても大きな働きをしているでしょう。実際にやってみなければわからない、曖昧な部分がかなり大きいことを考えれば、過去の情報だけに頼ることはできないんです。勝負において、確かにデータの積み重ねとか確率を上げていくことも大事なことだとは思うんですけれども、プラスアルファの違う何かがあるんじゃないか、という気はすごくしていますね。