死ぬのも謙虚に?

「あの世」の準備、できていますか?

このやりとりも、印象に残りました。

 

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田口 ・・・謙虚さが売りっていうのは、人生のゴールにも当てはまりそうな気がしますね、日本人の場合は。なんとなく謙虚に死ななきゃいけないみたいな(笑)

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矢作 笑いながら、「あー、もう死ねる~。さようなら~」とか言ったらマズいわけですよね。・・・涙を誘うような感じでないといけないようなところがありますかね。

田口 大筋で世の中がこういうふうに考えているということに、だいたい人って逆らえないものですから、その流れのなかで発想し、その流れのなかで感情を動かすっていうことを、無自覚にやっているんですよね。とりわけ死というセレモニーに対しての一般常識の「こうあるべき」っていうのはかなり強いものですから、そこがね。

矢作 人生万事道化芝居っていうようなところはあるんでしょう。

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田口 ・・・矢作先生の本『人は死なない』は、たくさん売れましたけど、みなさん少し誤解して読んでいると思いますよ。「そうか死なないんだー」って(笑)。死にたくないっていう気持ちを、余計増長させているかも。

矢作 ありゃ、そうですか。

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 ただ、こういうことって、押し売りをするとかえってダメだと思うんですよ。というのは、自然とわかるときが来ると思うので、来る人には。だから押し付けがましくないというのは重要だと思います。つまり自分が考えていることがいいことだと、仮に思ったとしても、相手には自由意志でしか伝わらないというくらいの割り切りというか、慎ましさがいると思うんですよ。押し付けがましさが表に出た瞬間、相手だって、大の大人だから、「お前に言われたくないよ」と思うでしょうしね。自分はこう考えていますと、幸せ感が出てれば、人は、「あ、そうかな」と思うかもしれないし。