遠回りの中から集まったもの

ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書)

この辺りも、たしかにそうだな〜と。
その人を通して、生まれてきたものが面白いのかなと考えると、アニータさんがエゴが大事って言ってたことともつながるような気がしました。

P107
 一般的にプロの絵描きとは絵を描くためのコツ、いわばうまく描くための近道を知っている人たちだと思われているかもしれませんが、とんでもない。そういう近道はありません。そんな魔法みたいなものは、どこにもない。どうやったらこれまでと違う描き方ができるか、これまでに描いたものを超えていくことができるか。プロとは、そのためのデータ、つまり、こう修正したらうまくいったとか、こういう場合は失敗したとかいう、自分なりのデータをたくさんもっている人のことではないでしょうか。
 そして、そのデータを手に入れるためには、なるべく遠回りをしていろいろなことを見ておく必要があります。・・・

P109
 アイディアや発想のことを「自分の中から湧き出るもの」と言う人がいますが、確かに自分の力だけに頼っていたら必ず限界があるでしょう。でも、ぼくらは決して独りで生きているわけではありません。そういうときは、誰かから借りてくればいいと思います。
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 ぼくの場合は、そういうときはやたらと文字が恋しくなります。新聞でも雑誌でも、とにかく手元にあるものをかたっぱしから読む。広告のコピーや子どもの図鑑なんかもよく見ます。
 そんなことを繰り返しているうちに、材料がたまります。すると、そこから、何か新しいことが見つかる場合があるのです。
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 創造の神様をただ待つよりも、アイデアや発想を誰かから借りてくる、想像力を刺激する状況をつくる、ということのほうが簡単で現実的な方法です。
 だから、むしろ急いでいる人ほど、本当は遠回りや寄り道をたくさんして、せっせと「仕入れ」をしたほうがいいのだと思います。
 そもそも、ぼくらという存在は、ほとんど外からの借りもので成り立っています。アイデアや発想も同じです。だったら、むしろどんどん外から取り入れて、自分の中でチャンプルーにしてしまったほうが、自分がこれまで思いもしなかったものが生まれてくる、あるいは、考えもしなかったことに気づくことにつながるはずです。