生き続けると知っている

詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡 (朝日文庫) むらさきふうせん

このお話、印象的でした。

P207
 ・・・『むらさきふうせん』という絵本です。作者はクリス・ラシュカという人ですが、キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』に出てくる挿話、「自分の死が近いことを意識するようになったとき、<いまの気持ちを絵に描く>機会を与えられると、子どもはよく、青もしくは紫の風船が手から離れて、ふわふわただよっていく絵を描きます」をもとにしています。
 その事実は「子どもたちの文化的、宗教的背景とかかわりがないことが医療の専門家には分かっていますし、それは子どもたちが自分の一部は永遠に生き続けると、生まれつき知っていることの表れだと研究者たちは信じています。」ということです。
 ふつうみんな死が近づいてくるとか、死神が来たとか言いますね。いわば死に対して受身です。でもこっちが死に向かって近づいて行くことも、心構えとしてできるのではないでしょうか。もちろん積極的に自分で死を選ぶという話ではありません。死が来るのを待つという発想より、日々死に向かって歩むという発想のほうがすこやかな感じがするんです。子どもたちがみずから風船となって空へ、宇宙へ昇っていくイメージは美しい。死が私たちを天国や地獄に閉じこめるものではなく、私たちを未知の宇宙へと解放してくれるものだということをぼくも信じたい。