荒井良二さんの本

ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書)

荒井良二さんの「ぼくの絵本じゃあにぃ」、先日一部ご紹介しましたが、あともう少し書きとめておきたいところがありました。。
自由ということについて、色々思いがめぐる本でした。

P76
 ・・・ぼんやり新聞やテレビを見ていると、難民キャンプなどの様子が日々報道されます。荒廃した場所で暮らしている子どもたちの姿。・・・国境の真ん中にたたずんでいるこの子どもたちは、いったいどんな気持ちなんだろうと気になってしょうがありませんでした。
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 もし、自分がそのような厳しい状況に置かれたら、いったい何に希望を見出せばいいのでしょうか。ぼくは、近くに自分と同じようなことを考えている人がいるとわかることこそ、一番心強いことではないかと考えました。そういう人と出会うことができれば、「え?おまえも?」とちょっとした希望が芽生えるに違いない、と。
 だからぼくは、そういう物語をつくりたいと思いました。それが『はっぴぃさん』の最初の発想です。もちろん、この絵本は「そういう大変な所がいっぱいありますよ」ということを教えるための本ではありません。そうではなくて、どういうところに住んでいたとしても希望を持つことはできる。そういうことを描いた本です。
 たとえ荒廃する世界に住んでいたとしても、その人たちが心まで荒廃しているわけではないとぼくは思います。
 日本という幸せな環境に住んでいると、そういう世界で生きている人たちをかわいそうと感じる人もいるでしょう。確かに、それはそうかもしれませんが、ぼくはそういう人も自分たちと同じように希望をもって生きているはずだということを描きたかったのです。
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 人間が生きていくための根っこの部分で世界共通のものが、きっとあるはずです。そして、「願いごと」とはそういうもののひとつだとぼくは思うのです。文化や政治や経済や生活環境が違っても、「願いごと」は変わらない。この絵本では、そのような現代を生きている人間にとって共通のモチーフを扱いたかったのです。

はっぴぃさん