馬鹿げたアイデア

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書)

 こういうの、大事だな~と思いました。

 

P57

 ・・・解決方法が壁に突き当たったとき、柔軟な発想で、斬新な解決方法を思いつく人は、頭の中に、・・・「馬鹿げたアイデア」が生まれる人である。

 ・・・

 ・・・そこで、一つ、象徴的なエピソードを紹介しておこう。

 ・・・実際に米国であったエピソードであり、極めて示唆に富んだものである。

 ある超高層ビルのオーナーが、あるとき、エレベーターの数が足りないという問題に直面した。

 そのビルで働く人々の数に比べて、エレベーターの数が少なかったため、毎朝のラッシュアワー時に、なかなか来ないエレベーターに対して、人々の不満が溢れたのである。

 そこで、この問題の解決方法を検討するチームが作られ、そのチームでは、

「高速エレベーターに取り替える」

「建物の外部にエレベーターを増設する」

「人々の出社時間をずらす」

 など、様々な解決方法が検討されたが、いずれも、コストや手間のかかる実現性のないアイデアであった。

 しかし、このチームが問題の解決に行き詰まっているとき、ある人物のアイデアが、この問題を見事に解決したのである。

 それは、

「エレベーターのドアの横に『鏡』を置く」

 という解決策であった。

 そして、この解決策を実行することによって、人々は、エレベーターを待っている時間を、自身の身だしなみを整える、自分のファッションを確認するなどに使えるため、待ち時間を苦にすることは無くなり、不満は見事に解消されたのである。

 このエピソードは、技術的な解決策や制度的な解決策など、表層的な「解決の方法」に目を奪われて問題の本質を見失ったとき、本来の「解決すべき課題」、すなわち「エレベーター利用者にとって、待つ時間が苦痛である」という本質的な問題に目を向けることによって「視野狭窄」を脱し、まったく斬新な解決策を発想できたというエピソードである。

 ・・・

 ・・・我々が企業や市場や社会において直面する問題の多くは、表面的には技術的問題や制度的問題であるように見えるが、その奥には、必ず、人々が心理的に苦痛を感じたり、困難を感じたり、快適さを求めたり、安心を求めたりするなど、「人間心理」や「集団心理」の問題があるからである。

 ・・・

「解決の方法」ではなく、「解決すべき課題」を考える

 という原則に戻ることを促している。