あちこちガタが来てるけど心は元気! 80代で見つけた生きる幸せ

あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ

 やって楽しいことができたら、こんなに変わる・・・すごいなーと思いながら読みました。

 

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 初めまして。G3sewing(じーさんソーイング)です。

 私たちは、84歳の父、80歳の母、50歳の三女の私でやっている小さなソーイングチームです。・・・

「親子で仲が良くてうらやましい」と、思われる方がいるかもしれませんが、それはここ2~3年のこと。以前は、今とは真逆のような生活でした。父(じーさん=G3)は現役の頃は職人。短気で人づき合いが苦手なので、仕事で失敗してばかり。だから、家族はずっと貧乏生活でした。

 G3の年金は月3万円ほどで、貯金もありません。68歳からは、次々と病気を患い、家ではほとんど寝たきり状態。そんな状態を憂えて、G3は家出や自殺未遂をしたこともありました。

 G3が82歳のとき、私がお願いしたミシンの修理をきっかけに、ミシンでの物作りを始めました。それまでミシンは触ったこともなかったのですが、どんどん熱中していきました。その後、材料費を捻出するために、作ったものを販売していましたが、全く売れずに、物作りが続けられないピンチに……。

 そんなとき、孫のアイデアで始めたツイッターで、思いがけずにバズってしまいました!

 この本では、G3sewingが試行錯誤しながら進んできた日々をお伝えします。「老後に2000万円の貯蓄はない」「年をとって楽しいことがない」と暗い気持ちになっている、かつてのG3や私たち家族のような方々に、生きる希望を感じてもらえたらと思います。・・・

 

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 G3は、現役時代、電気工事士の資格を持ち、主にテレビ・ラジオなど電化製品の修理の仕事をしていました。手先が器用で、職人としての腕は確かでしたが、曲がったことが嫌いな頑固者。短気で人づき合いが苦手です。

 いいときもありましたが、すぐにカーッとなる性格のため、けんかが絶えず仕事が続きません。だから、私たち家族は、いつも貧乏暮らしでした。

 そして、68歳からは病気のオンパレード。大腸憩室症で大腸を半分摘出し、大動脈解離で生死をさまよい、手術や入院を繰り返しました。

 その後、痛風、糖尿病、そして、病気が原因で鬱病にもなりました。落ち込むと、「死にたい。生きていても意味がない。みんなに迷惑かけとるだけや」と言い、家出や自殺未遂をしたこともありました。

 精神的にも不安定で、プロ野球の試合で巨人が負けたというような些細なことで怒り出すので、家族にとっては迷惑な存在でした。子どもは、長女、次女、私、弟と4人いますが、みんなで「今すぐ死んでくれてもいい」と本気で言っていたほどでした。・・・

 ・・・

 2019年のある日、私はG3に壊れたミシンの修理をお願いしました。表向きは修理の依頼ですが、本当はミシンを修理することで、長年培ってきた職人としての魂がよみがえり、少しでも元気になってくれれば、そんな気持ちでした。

 G3はベッドから起き上がり、あっという間にミシンを修理。ちゃんと動くかを確認するために、私が上糸と下糸のかけ方を教え、実際にG3に縫ってもらいました。すると、瞬く間に布を縫いあげるミシンに感心し、興味を持った様子。・・・

「何か縫いたいなあ」とG3が言うので、私が以前に母(=B3)に作った聖書カバーを見せ、「これやったら、簡単だから作れるんとちゃう?」と助言。・・・

 ・・・「楽しいなあ。もっと作りたいな」と言うので、私の家族4人分の聖書カバーを作ってもらうことにしました。

 3日後、連絡があったので見に行くと、なんと、18枚も聖書カバーを作っていました。

「こんなに作ってどうするの?」

 ・・・今まで寝たきりだったG3に、「こんな力が残っていたなんて!」とびっくりし、「好きなことは、人をこんなに元気にするのか」と、改めて思った瞬間でもありました。

 

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 G3とB3は、私と同じアイフォンに変えたとき、アプリを使ってオンラインで決済できるペイペイにも登録しました。チャージは、G3がG3sewingで得たお金が入っている銀行口座から引き落とされるように設定。通常は、現金を持たずに、ペイペイで支払いをするようになりました。

 銀行にお金をおろしに行く手間が減り、高齢者にとっては便利なツールだと思います。慣れないうちはモタモタするので、スムーズに使えるようになるまで、家で何度も練習しました。今では、どこでもサッと使えるようになりました。

 例えば、こんな使い方をしています。時々、お昼ごはんに近くのすき家に3人で食べに行くことがあります。今までは、お金がなくて外食はほぼゼロ。行ったとしても、私がお金を払っていました。

 それが今では、G3がレジで「支払いはペイペイで」と言うのです。G3に奢ってもらう日が来るとは、夢にも思いませんでした……。「わしが2人を食べに連れて行くことになるとはな~」とG3本人ですら言っています。月末の「頑張りました会」の外食代も、G3が払ってくれます。

 ・・・

 お金を使う一番の楽しみは、孫たちへのお小遣いです。今まで、孫たちからもらうことはあっても、あげることはありませんでした。遠くに住んでいる長女の娘(G3の孫)には、ペイペイでお小遣いを送金していることもあります。

 

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 やりたいことはどんどん出てきますが、今は3人なので、なかなか手が回りません。それなら、80歳以上の人を募集して、一緒に作ってもらったらどうだろうというアイデアが浮かんできました。

 ・・・かつてのG3やB3のような方々に、生きる希望を感じてもらえるかもしれない。きちんと報酬制にして、1日数時間でも仕事をしたら、気持ちにも張りが出ます。そして、自分で使えるお金を、自分で稼ぐこともできます。G3がこんなことを言っていました。

「何もしないとボケてしまう。それは、俺が一番よく知っている。ずっと死にたいと思っていたから。どうやって死のうかと、死ぬことばかり考えていた。家族には怒られてばかりだし、金を使うのは病院代だけ……。G3sewingをやっていなかったら、死んどったと思う」

 そんなG3でも、生きる希望を取り戻しました。

 ・・・

 G3sewingに、強力な助っ人が現れました。家族で通っている教会の前の牧師さんの奥様、91歳のおばあちゃんです。数年前にご主人は亡くなっているので、現在ひとり暮らし。・・・

 その方から「お手伝いさせて!」と、ありがたい申し出がありました。・・・がま口バッグの裏地を、キルティングの生地で作ってもらっています。

 ・・・

「ミシンをしていると楽しくてしょうがない!生きている感じがするの。朝起きて、お仕事があるってうれしいわね」と、言ってくださいました。でも、G3と同じで、頑張りすぎることが心配。「くれぐれも無理しないように」とお伝えしました。

 強力な助っ人の登場で、80歳以上が活躍できるG3sewingにしたらどうだろうと思っていたことが、ますます現実味を帯びてきました。

 


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