それぞれの国に、いいところとそうでもないところは色々あると思いますが、ドイツのこの制度や考え方は、たしかに羨ましいと思いました。
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コロナ禍で、他の国が羨ましいと何度か思った。
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そんな中でも印象に残る国ナンバーワンは、ドイツだ。
何しろ2020年3月の時点で、労働社会大臣(日本の厚生労働大臣)がドイツ国民に「生活保護をどんどん利用してください」と動画で呼びかけたのだ。呼びかけるだけでなく、のちに詳しく書くが、申請をめちゃくちゃ簡素化して使いやすくした。
それだけではない。同じく3月、ドイツでは、家賃を滞納しても最大2年間は解約できない=追い出せないという決まりができたのだ。滞納分はどうするかというと、家主が支援を受けるという形だ。
また、コロナ禍は劇場やライブハウスを閉鎖させ、アーティストの活動の場を根こそぎ奪ったわけだが、やはり3月、ドイツの文化大臣は「アーティストは生命維持に不可欠な存在」と断言。フリーランサーや芸術家、個人業者への大規模支援を約束した。
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さて、他にはどんな点が日本と違うのだろう。例えば日本の場合、何もかも失わないと利用できないわけだが(条件によっては家や車は持てるが)、その辺はどうなのか。
「ドイツでは、コロナ禍前でも生活に必要な資産は保有を認められています。例えば持ち家なら、単身、2人世帯だと80㎡の物件までは持っていてOK。自動車は750ユーロ(約100万円)以下のものであれば持ったまま保護を受けられます」
家、車がOKなら、制度利用のハードルはぐっと下がる。では現金はどうだろう。日本の場合、単身だと6万円くらいまで減らないと申請できないが。
「コロナ禍前でも、現金は一人あたり130万円くらいは持っていて大丈夫でした。持ったまま申請できるんです」
それはすごい。それだけあれば、生活保護を卒業する時も安心ではないか。
「老後のための生命保険などもそのままで大丈夫、解約しなくていいんです」
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もうひとつ、重要なのは扶養照会。家族に連絡がいくアレだ。
「ドイツでは、親兄弟の間で助け合うというのは、よっぽどお金がある人だけの話です。収入がよっぽど高い人だけ、年をとった親にかかった生活保護費の一部を国に返して下さいと請求が来る程度で、それ以外の場合は援助ができるか問い合わせたりはしません」
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「ドイツでは、『高齢の親の生活費は子どもが責任もて』みたいなことはもう誰も言わないと思います」
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「ドイツでも、家族が介護しているケースは多いんです。ただ、日本と違って家族が介護をすれば、介護保険からその家族にお金が出るんです」
それは素晴らしい。というか、今すぐ日本でもそうしてほしい。日本の場合、いくら家族が介護をしてもビタ一文出ないのに、年間10万人も介護離職している状況だ。・・・
「もちろんヘルパーさんも来ますが、近所の人や親戚の人が介護しても、介護の報酬が出るんです。家族が介護をするなら社会の制度に支えてもらうということですね」
なんだか前提の違いに驚くばかりだが、そんなドイツでは、生活保護費はだいたいいくらくらいなのだろう。
「大人一人で生活費として449ユーロ(約6万2000円)です。家賃と暖房費、医療費は別です」
日本の生活保護の生活費が8万円弱であることを考えると、意外と少ない。
「そうなんです。もともとドイツは三食あたたかいものを食べる習慣がなく、夜は黒パンとチーズみたいな国で食費がかからないんですが、それでもこれでは暮らせないということで、福祉団体は678ユーロ(約9万3000円)は絶対に必要だと言っています。ロシアのウクライナ侵攻で、食料品など物価が上がり、とりわけガス料金が上昇しています。寒い国なのでちゃんと冬に暖房ができるかが社会問題になっています」
意外と少ない額にびっくりだが、全体としては日本に比べて先進的なドイツの生活保護。それがコロナ禍でさらに大きく進化した。
「まず具体的には、手続きが簡素化されました。新規の申請があった時には、6ヶ月間は資産(貯金など)の調査をしないことにしたんです。単身の人なら預貯金が6万ユーロ(約800万円)未満であれば、調査なしで利用できるようにしました。貯金があったとしても、コロナの間にそれを取り崩さなくていいという姿勢を示しました」
800万円‼日本であればそんな額があれば絶対に門前払いだが、それだけ貯金があっても生活保護を利用できるようにしたのである。
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「住宅費と暖房費も、6ヶ月は実費を支給しますということになりました。住宅扶助基準より高い家賃の家に住んでいても、家賃の実費が支給されるんです。6ヶ月経ったところで判定されるんですけど、実際の減額はそれからさらに6ヶ月後に、となります」
考えてみれば、コロナ禍で突然収入が絶たれた中にはもともと低収入だった人もいる一方で、アーティストや自営業者のように、それまでは稼いでいたけど収入ゼロになったという人もいる。そういう人は高い家賃のところに住んでいるわけだが、その実費が支給されるとはなんとありがたいことだろう。
「保護を受けてすぐに引っ越せと言われたら生活が落ち着かないからですね。家を探したり引っ越したりではなく、落ち着いて仕事が戻るのを待ったり、仕事を探せる方がいいので無理は言いませんということだと思います」
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ちなみにコロナ禍初期、ドイツでは役所の窓口を閉めていたという。では、どうやって申請したのだろう。
「オンラインや郵便で申請するんです。どちらもちょっとチェックすればいいだけで、後日口座に振り込まれる」
なんという気軽さだろう。・・・
ちなみにドイツ政府はコロナ禍が始まってすぐ、生活保護を受ける人が120万世帯増えることを見込んだという。実際はそこまで増えなかったらしいが、激増する可能性があるという心構えと準備が多くの人をスムーズに救ったのだ。
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それにしても、なぜドイツはバッシングを乗り越え、制度をよりよくしていこうということができたのだろうか。
「逆に、日本の社会が特殊なんだと思います。すぐに誰かを叩いたり足を引っ張ったり、自分が過剰に我慢したり人に合わせたりしますよね。でもドイツでは、子どもの頃から自分の意見を言って議論するし、自分の権利と周りの人の権利の大切さも学ぶ。保育園から違います。日本だと、先生が『じゃあ今日は一緒にみんなで〇〇しましょうね』と決めるのが当たり前ですけど、ドイツでは、一人一人が今日何をしたいかを決めて、周りもそれを尊重する。みんな一緒に揃って、じゃないんです。そういう社会だから、権利を相互に尊重し制度をよりよくしていくのは当たり前だということだと思います」
もうひとつ違うのは、難民や移民の存在だ。
「ドイツは過去の歴史の反省から、難民の人を受け入れています。2015年にはシリアなどから100万人近く受け入れたし、22年にはウクライナから100万人くらい受け入れている。そういう人たちが普通に暮らしている社会になっています。・・・今回ウクライナから逃れてきた人には、最初から生活保護の利用を認めることにしました。滞在許可と就労許可もすぐに認めています。もちろん、もともとドイツにいた人たちと軋轢が生まれることもありますが、難民の人には、できるだけ早く、生活をちゃんと支えて、ドイツ語も覚えてもらって働いてもらった方がいいということは社会で合意ができている。どこかの施設に収容しておくのではなく。街で一緒に暮らす、長くいてもらうから職業訓練で能力を高めてもらう。この方が経済的にもいいし、そういう社会を作るのだという覚悟ができている。今は新たに、ロシアから徴兵や弾圧を逃れてきた人を受け入れようとしています」
