釣りたての魚と日本酒おいしそうだなー、それにしてもよくそんなに呑めるなー、ウォッカを入れるなら冷凍庫では・・・など思いつつ、楽しく読みました。
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今回も雑魚釣り隊の釣りキャンプの話だ。キャンプの夕食のおかずになるような獲物は海から得る。マグロを筆頭にカツオやサバなど、(マグロやカツオなどは釣ってすぐは固いが)時として魚屋が開けるのではないかと思えるくらいの大漁になったりする。キャンプ料理は、釣ってきた獲物がほんの二、三時間後にはまな板の上の刺し身となって出てくるのがほとんどだから、もう圧倒的に申し訳ないほどうまい。
まずは気軽に飲めるものとしていつも大量の缶ビールを持っていく。陸っぱり(岸から竿を投げて釣ること)などではまぁ、軽く飲みながらあてもなく釣りをすることも多いが、全員揃っての刺し身大会などになると、もう、しこたまビールを飲んでいるということもあるのだろうが、新鮮な魚にはビールはちと食感が違う日本酒がいい。魚が新鮮であればあるほど相性がわかるというもんだ。
いろいろ試した結果、冷酒がいい。ビールやウイスキーなどは、持参の歯を磨くときにも使うようなブリキのシェラカップなどでも一向に構わないのだが、日本酒となるとそうはいかないというのも不思議で、一番いいのは湯吞み茶碗である。よく洗って乾燥し、茶碗の内側が真っ白に輝いているようなものに、清酒をとくとくと注ぎ、半分くらいまで満たしたやつをぐいっと飲み、新鮮な刺し身を一箸、二箸、ついでに三箸も食べては、また日本酒をぐい。
長い経験からどうやらこれに勝るものはないようで、その黄金コンビの座は到底ゆるがないような気がする。
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極寒のシベリアのタイガ(針葉樹林帯)、マイナス四十~五十度ぐらいのところでロシア人らと焚き火を起こし、ウオトカを飲んだ。マイナス五十度の焚き火はヘンテコだった。あたりに生えているシベリアマツの生木を燃やすのだが、木も全体が凍っているから、三、四センチの太さの枝も膝と両手で簡単に折ってしまうことができる。怪力男になったようで気持ちいいのだ。
ところでシベリアの焚き火はあまり面白くない。暖かくないのだ。これは焚き火の炎がかざした手に暖かみとして伝わってくる間に、壮絶なマイナス気温がぬくみをカットしてしまうからのようだ。
シベリアの男たちにはウオトカが欠かせない。まわりの雪の塊の中にウオトカの瓶を突き刺してさらに冷やす。そこまで冷やして決して凍結することがなく、冷えれば冷えるほど全体が水あめのようにとろーりとした状態になり、これを陶製の器で飲む。決して金属の混じった合金製の器で飲んではいけない。くちびると器がぴったり癒着し、とれなくなってしまうのだ。シベリアではこれを「鉄が肉に噛みつく」という。無理やりとろうとすると鉄より弱い人間の肉をはがすしかないから、酔うのも命がけだ。
さて、とろーりとした水あめウオトカは味わって飲むようなものではなく、簡単に言えば口の中、喉の奥へとろーりと流し込むようなあんばいになる。とことん冷えた液体だが、ここまで極低温になると強いアルコールは人間の味方になり、ゆっくり胃の中で発熱材料となっていく。
シベリアでは極寒の野外で水を飲んではいけないという。一気に水を飲んだりすると、そのまま死んでしまうこともあるという。
全体がゆるーい水あめのような状態になったのを小さなカップにとろーりと注ぎ、それをガバーッと一口で飲む。こんなことしてわがイブクロらは大丈夫だろうか!と一瞬わけのわからない不安に襲われるが、ウオトカは体内もそうやってゆっくり流れていくらしい。しかしやはりそのままにしておいてはイカンようで、一口で飲んだあとにトマトをかじる。トマトはモロッコから輸入しているらしい。
このトマトひとかじりとウオトカをカパーッと一口、の組み合わせがヨロシイみたいで、十五分ぐらい続けると「酔い」の最初のヒトカタマリが食道から喉をかけのぼり、脳髄をケトバシにくる。
なるほどトマトが、貪欲で荒々しいウオトカの単独暴れ狂いをうまく宥めているのがよくわかってくる。
で、さらにこのウオトカ→トマト→ウオトカの連続攻撃となる。
一時間もすると酔いは全身をかけまわり、ぐらぐらしてくる。とくに腰にくるようだった。あっちこっちでバカ飲みしてきたぼくはそれでもかまわずさらに飲んでいったらやがてまともに立てなくなってしまった。生まれて初めての本格的な酔いを体験した。
日本でこのトロトロウオトカを飲みたくなって瓶ごと冷蔵庫に三日冷蔵したが、ついにトロトロにはならなかった。
