リラックスして

ニュージーランドの保育園で働いてみた: 子ども主体・多文化共生・保育者のウェルビーイング体験記

 リラックスとかゆとりって、ほんとに大事だなと思いました。

 

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 ・・・すごく勉強になったのは、テ・ファーリキが採用しているクリティカルセオリーの考え方でした。テ・ファーリキには、子どもの学びと発達に対する不公平や不平等をとり除くことについて書かれているのですが、同時に「保育者(教育者)だからといって、いつも公平で矛盾のない意思決定ができるわけではない、それは不可能だと理解することが大切」とも示されています。・・・まずは「だれだって矛盾した判断や不公平な意思決定をすることがある」と認め、それから、子どもと保護者と子どものファーノウ、そして保育園やクラス担任のチームで、一人ひとりの子どもにとってより良いものを探しましょう、ということです。

 ・・・このような考え方を採用しているんだと知って「えー!いいの?」と、肩の荷が下りた気がしました。・・・実際に保育をしていると、やりたくない苦手な活動があったり、僕が苦手な遊びを好んでくり返す子への対応に時間がかかったり、初めての状況でどうしていいかわからないときがあったりと、全然、良い保育者になれていないという罪悪感がありました。しかし、そもそも自分以外のだれかを理解しようと思うときや、多様性の中で共生するということは、決してきれいごとだけではなく、どうしても受け入れられないことや苦手な考え方、理解できない行動があって当たり前で、感情が動くのは自然なことだと自分を許せるようになりました。そう思うと、理解できない価値観にも、その人たちには、その人たちの大切にしているものがあるんだなと、楽に考えられるようになっていきました。頭の中がほぐれて、リラックスできた感じです。

 

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 ニュージーランドには金曜日はリラックスしようという雰囲気が社会全体にあり、僕たちのクラスは午前中に「今日は金曜日だから、ランチにフィッシュアンドチップス食べたいね」とだれかが言ったら「だれかがそう思うと思って今日お弁当持ってきてないんだ!」と言う保育者もいて、一番休憩が早い人が近くのお店に買いに行くということも時々行っていました。それだけで少しお昼が楽しみになり、午前中も楽しく仕事ができるという工夫でした。また、保育園ではありませんが、企業で働く会社員の知人は、毎週金曜日の15時から17時まではレクリエーションの時間で、みんなで映画を見に行ったり、スポーツ観戦をしたり、飲みに行ったりというのが仕事の一環だと言っていました。そして、金曜日のレクリエーションをどう過ごすかのミーティングがほかの曜日に開かれるのだそうです。おもしろいですよね!また、ほかの保育園でも、毎週金曜日は移動式カフェを呼んで、職員が好きなコーヒーを注文したり、金曜日には園長先生がカフェでコーヒーを買ってきてくれるというところもありました。僕が働いた小学校でも、金曜日はシェアードモーニングティーといって、保護者が差し入れのケーキやマフィンを職員室に届けてくれたり、保育者たちが順番に担当して、フルーツやお菓子などを持ち寄ったりしていました。僕が保育園の前に働いていたキウイ農園でも、金曜日ではありませんが、早朝から大量に収穫できた日は、オーナーがビールを箱買いして、仕事終わりにねぎらいとして全員に振る舞ってくれていました。

 

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 僕はけっこうおっちょこちょいで、園でもお皿や花瓶を落として割ったり、掃除道具を壊してしまったりしていました。そういうとき、・・・保育者たちがよく「イエーイ!」・・・と声をあげて、場を和ませてくれました。・・・当然ミスの大きさにもよると思いますし、職場によると思いますが、だれでもミスはするものという考え方、自分もミスするからやってしまった人のことも責めないという姿勢が温かいなと思いました。・・・保育者の言動やチームへの貢献は子どもたちの見本になるので、チームメイトのミスに一人ひとりがやさしい気持ちを持てるよう、自分の心身の健康と幸福感に責任をもってケアする必要があるんだなと思いました。