交通事故で頭を強打したらどうなるか?

交通事故で頭を強打したらどうなるか?

 他の本に引用されていたこの本、興味深い内容でした。

 マンガなので、文字の部分だけの引用になりますが、書きとめておきたいと思います。

 

P89

脳挫傷から36日経過―

 他の問題は無意識にやっていたが算数の時だけ再び意識が(一瞬)戻った

 九九はできたようだが繰り上がりで混乱した

 いったん数字を保留しその上で次の数字と足す

 という思考ができなかったのだと思われる

(一桁の足し算だけならできた)

 

 好きな人を聞かれ存在しない人物の名前を言った

 

 囲碁は無意識のままできたようだ

 勝ったと言っても昔の家庭用ソフトなので

 難易度が高いわけではない

 

 ピアノの時は比較的長い時間意識が戻った

 20秒程度だと思われる

 ピアノは中学生以降やっていないので

 完全に意識が戻っても同程度しか弾けなかっただろう

 

 事故から2回目になる実家への帰還を終え 

 それから3日後―

 

 脳挫傷から36日―

 ついに元の意識が目覚めた

 

 元の意識が戻ればもう大丈夫だと

 この時はそう思っていた

 ・・・

 そんなことが…

 正直……

 まるで信じられなかった

 他人事のようだった

 しかし「突然の病院」

「未整理の断片記憶」

「よく見えない目」などから

 母の言っていることは

 事実だとすぐに信じられた

 私は―

 トラックと衝突したのだ

「私」が目覚める かなり前から この体は動いており―

 記憶は全くないが返事 食事 簡単な会話から始まり 囲碁などもできていたらしい

 誰が……

 誰が体を動かしたのか?

 私が私であると思っていた「この」人格―意識―

 この意識は「大和ハジメ」そのものであると思っていた

 この体は「大和ハジメ」が自由に動かせると思っていた

 が 

 違ったのだ

「私の中」に脳という器官が存在するのではない

「脳」の一部の機能として私が存在するに過ぎないのだ

 

P200

 いくら親が望もうと理解できない授業を受け続けることに引け目を感じていた

 高い授業料が無駄になると

 保険金のおかげで 私は堂々と大学に通えるようになった

 堂々と―生きられるようになった

 無理に理解しようとしないで授業を受けることを続けた

 これで試験がどうなるかはわからない……が

 もう授業料の心配はしなくていいので以前よりずっと気が楽だ

 板書をノートに写すだけの作業を続け―

 やがて試験期間がやってきた

 私は試験の点が取れるのだろうか?

 結果は―点数が取れた科目と0点に近い科目があった

 英語 数学系は駄目だった

 そう……この受講方法では限界があるのはわかっていた わかっていたはずだが―

 気が 抜けてしまった

 希望が持てない 

 勉強を続けても頭を打てば一瞬で無に帰す……?

 いや……「無」どころか「マイナス」か

「障害等級8級」は労働能力が45%「喪失」した者に認定される―と国土交通省の資料に書いてあった

 つまり私は将来 労働者として45%劣る人間にしかなれないという事なのでは?

 だとしたら―

 もう 無理じゃないか

 何をしたって無駄じゃないか

 何が大学だ 何が勉強だ

 馬鹿馬鹿しい 嫌だ もう嫌だ

 事故にさえあわなければ―

 ―駄目だ このような考え方をしては駄目だ!

 目を背けるな―私は交通事故で頭を強打した後遺症を負ったのだ

 これは変えようがない

 だったら―

 だったら―

 この変化した脳を―

 おかしな頭を―

 プラスに働かせることはできないのだろうか?

「事故は無駄じゃなかった」

 ―更に言えば―

「事故にあって良かった」とそう思えるような行動を取れば良いのではないか?

 これからそういう生き方をすれば良いのではないか?

 私は前を向いて生きられるのではないか?

 あるのだろうか?そんなものが

 ―あるとすれば―

「人と違う」という要素が欠点にならないようなこと?芸術?創作?

 ―漫画?

 ―そして私は生まれて初めて漫画を描いた

 ・・・

 自分の作品を載せるためホームページを作った

 様々な作品を入れる箱―という意味を込め サイト名は「ANBOX」とした

 イラストや 漫画を公開したが 閲覧は数人で反応は全く貰えなかった

 しかし更新は続けた

「創作を取り柄にしたい」という目的があったからだ

 障害の影響で下を向くと焦点が「大幅にずれる」ためとても絵が描きにくかった

 創作を続けるにあたりこの問題は致命的だと思ったので漫画を描く前にペンタブレットを購入

 ・・・

 さて創作は続けるとしてまずは大学だ

 たとえ身に付かない―就職に繋がらないとしても通う以上は卒業するべきだろう

 幸い数学系の単位は必修ではない

 他の単位をどうにかすれば卒業はできる―かもしれない

 プログラム言語が心配ではあるが……

 駄目で元々 当たって砕けろ

 やるだけやって その上で卒業できなかったのなら仕方がない

 それが私の限界だということだ