お母さんもお父さんも出て行って、祖父母に育てられた風間トオルさんの様々なエピソード・・・、こんなこともあるんだと驚きつつ読みました。
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・・・祖父母から何を一番教えてもらったのだろう?と改めて振り返ってみると、何をしたら人が悲しみ、何をしたら人を喜ばすことができるのかといった、人の気持ちを想像することの大切さだったように思います。
特に祖母は、街で大きな荷物を持って歩いている女性を見かけると、決まって僕に、
「なぜ男なのに手伝ってやらないんだ」
「なぜ男なのにドアを開けてあげないんだ」
「なぜ男なのに順番を譲ろうと考えないんだ」
と、いわゆるレディーファーストの教えを説きました。
とはいえ、見知らぬ人に「荷物を持ちましょうか?」と声を掛けるのは勇気のいることです。
だから最初は「えっ!」と思って躊躇していたのですが、勇気を振り絞って声を掛けると、笑顔と共に「ありがとう!」という言葉がもらえたのです。
こうして僕は人に親切にすると幸せな気分になれることを学んだのでした。
親切にする対象は女性だけではありません。
「あのおじいさんは腰が曲がってるね。階段が大変そうだ」
と祖母に促され、僕は「大丈夫ですか?」と声を掛けに走る。
「あのお兄さんは、松葉杖で切符が買えるのかねぇ」
と祖母に指摘され、僕は「手伝いましょうか?」と申し出る。
時には無視されることもありましたが、「そんなことはどうでもいいんだ」「それがどうした」
と諭してくれたのも祖母でした。
感謝されないなら親切にする意味がないと、子どもの僕は思っていたのですが、今ならもちろん理解することができます。
きっと祖母は、「感謝されることを期待しない。それが男の優しさというものだ」と僕に伝えたかったのでしょう。
それにしても祖母はお人好しでした。
ある日カニの行商の人が我が家を訪ねて来て、「遠くから天秤を担いで来た」なんて聞くと、「そりゃ大変だたね~」と始まり、相手の苦労話に耳を傾けた挙句、全部買ってしまうといった具合。
もちろん行商の人は喜んでいました。代金を払ったら、残りの生活費が5円になってしまったなんてこともありました。
僕は「えーっ!」とのけぞって、今月はカニばかり食べ続けるのかと思ったのですが、祖母は有り金をはたいて買った大量のカニを前に、「今日中に食べてしまわないと傷んでしまう」などとつぶやいて、近所の人にポンポン振る舞ってしまうのです。
またもや僕はのけぞって、思わず、
「えーっ!あげちゃうの?お金ないのに明日から大丈夫なの?」
と尋ねると、
「明日は明日。いいの、いいの、なんとかなるから心配しなくても大丈夫!」
などといって、あっけらかんと笑っていたのです。僕は祖母の笑い顔を不思議なものでも見るように、ポカンと眺めていたのではないかと思います。
近所の人はみんな裕福ではなかったので、ドカンとお返しが届くわけではないのですが、小さなお裾分けの積み重ねがバカにならない。
そーなんだ、ホントになんとかなっちゃうもんなんだと深く納得した体験から、僕は生き延びる命の術を学びました。
お金は回る。でも本当に回っているのはお金ではなく人の情です。人情を持って人と接すれば、人情が返ってくるのです。
僕は祖母から、人を大切にし、人との繋がりを断たない限り、何があってもなんとかなるのだということを深く教えられた気がします。
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ある時、お台場に手からパワーを出すことで有名な気功師が来るという情報を知り合いの方から得て、たまたま近くにいたこともあり、面白そうだなと思って行ってみたことがありました。ところが気功の先生から「あなたのほうが気が強くてダメだ」と言われてしまったのです。
その時に「あなたは怪我をしたりしても、自分で治癒してきましたよね?」と訊かれて、そういえば……と。
たとえば、高校時代、バレーボールの試合中にブロックをした衝撃で右手の中指と薬指が中にめり込んでしまったことがありました。「アレッ?」と思って見てみたら2本の指が第一関節を残して消えていて、これはヤバいと思いましたが、試合を続行しなければいけなかったので、一気に指を引き上げ、そのタイミングで来た球を咄嗟にブロック。激痛が走るかなと思いきや、なんともない。すっかり完治していたのです。
何かの拍子に勢いよく後ろに倒れて後頭部を強打した時の体験も、不思議といえば不思議でした。
頭をザックリと切ってしまい、壁や床に飛び散るほどの血が噴き出たのですが、なにやら強い睡魔に襲われて、そのまま布団で寝てしまい、起きてみたら傷口が見事に塞がっていたのです。
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本当なら眠れないという時に、熟睡してしまう。これこそが自己治癒の大きなポイントなのですが、もう一つ、お臍の下に位置する丹田と呼ばれる辺りにグーッと力を入れて瞑想していると、免疫細胞の働きがグーンと高まって、腹痛が治まったり、熱が下がるということがあって、具合が悪い時はいつも実践しています。
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40代に入った頃、『オーラの泉』という番組に出演しました。
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・・・僕の前世はエジプトの神官で、陰陽師のような呪術的なことをしていたそうです。自分で自分の身を守る力があると聞いて確かにそうだと思い、「これまでにも奇跡的な体験があるのではありませんか?」と訊かれ、迷わず「あります」と答えました。
その時に話したのは、小さな頃、裏返しにしたトランプの数字を言い当てるゲームをしていて、あまりにも当たるので怖くなって途中でやめたこと。仕事でアフリカへ行った時に巻き込まれたセスナ機の着陸失敗事故の話もしました。
・・・機体の先端部が地面に刺さって、ビヨヨヨーンと漫画みたいな感じで止まったということがあったのです。
幸い炎上することはなく、死者も出ませんでしたが、同乗していたスタッフはみんな血だらけ。ところが僕だけは無傷でした。
それ以外にも絶体絶命のピンチから奇跡的に逃れたことが幾度もありました。
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僕の奇跡的な体験の話を受けて、江原さんから「風間さんの波動が事故を引き寄せているということも言えるので過信してはいけませんよ」とアドバイスを受けましたが、もっとも心に残っているのは、次に続く言葉です。
ーさきほどから、ずっと風間さんの後ろにお母さんの想いが視えるんですよ。生きている方であっても念を送っているのです。お母さんはいつも風間さんのことを見ています。見守ってくれていますよ。
とても意外な言葉でした。それまで僕は、5歳の時に別れたきりの母は、僕のことなど忘れているだろう、風間トオルは芸名なので、テレビで観ていたとしても気づいていないだろうと考えていました。
でも母が見守ってくれているという江原さんの言葉を聞いた僕は、その時、ハッキリと思っていたのです。そうであったら嬉しいなと。