ご本、出しときますね?

ご本、出しときますね?

 小説家二人と若林さんの3人のやりとり、面白く読みました。

 こちらは、朝井リョウさんのマイルール「安易に弱者の味方をしない」という話のつづきで、お相手は長嶋有さんです。

 

P77

長嶋 へえー。これ、かっこいいね。

 

朝井 難しい問題だと思います。

 

若林 強い男だなあ。

 

朝井 でも、考えていかないといけない問題だと思うんですよ。

 

長嶋 これ「安易に」がうっかり消えちゃうとすごい嫌な人になるね。「安易に」は言っておきたい。

 

朝井 そう。そうです。

 

若林 確かにそうですね。これ「弱者の味方をしない」って言ったらBPO放送倫理・番組向上機構)出てきちゃうよ。

 

長嶋 「安易に」がポイント。

 

朝井 やっぱり作品を書くことに寄っちゃうんですけど。友達がいない人を主人公にしたほうが応援されるし共感されるし、今は本を買う人に高齢者が多いから、高齢者を安心させる話が売れるんですよね。そこに手を染めてしまっていいのか?っていうのが、いつも考えることで。

 ロイヤルホストが大好きなんですけど、彼らは全くマーケティングをしないんですよ。会社の組織の中にマーケティングと名のつく部署がない。調べたんですけど、秋だったらきのこのフェアとか、他のファミレスはやるわけです。〝弱者〟って言葉を言い換えると〝大多数〟なんですけど、他のファミレスがきのこフェアという大多数の予想に合ったフェアを開催中でも、ロイヤルホストは「バスク料理フェア」というのやってて。「え、お前、それナニ?」っていう、誰も知らない料理なんですけど。

 

長嶋 攻めてるね。

 

朝井 それは、「担当のシェフがおいしいと思ったから」、ただそれだけの理由でやるんですよ。CMとかポスターとかも見ないでしょ?宣伝費を全部材料費に回してるんですね。シェフがおいしいって言ったフェアを実現させるために、材料費に全部回す。春も、他がいちごフェアとかやってるときに、「ニース料理フェア」っていう、また誰も知らないフェアをやってて。マジでかっこいいと思って。だからマーケティングをする人と、モノをつくる人っていうのは一致しちゃいけないんですよね。これは、それを伝えたい言葉なんです。

 

長嶋 そう書きゃよかったのに。「マーケティングをしない」って書けばすごく良い言葉なんだから。

 

若林 でも本は売れてほしいわけだよね?なのに、朝井くんは、(読者が)キャッチャーミットを構えてるところには投げない。だけど、無理やりにでも捕らせる球を投げる。みんながまだ言葉としては気づいていないような、奥深いところに投げ込んで啓蒙するってことじゃないですか。……やっぱ、時代を担っていってください。

 

朝井 ヤバイ、全部そこに繋げられちゃう。

 

若林 確かにロイヤルホストはアイスティーがなくて、パラダイストロピカルアイスティですね。

 

朝井 それから、店内に時計がないんですよ。時間を気にせずにご飯を楽しんでほしい、っていうストロングスタイルなんです。すごい憧れですね。

 

若林 あ、ロイヤルホストが目標。

 

長嶋 知らなかった……。

 

朝井 ぜひみなさんもロイホに!!