小林まさるのカンタン!ごはん

小林まさるのカンタン!ごはん (中経出版)

 なんとなく文字数軽めにしたい気分が続いてます(;^ω^)

 レシピ本ですが、こんなお話も載っていて、印象に残りました。

 

P49

 よく、老後は〝友達〟がいないと寂しいという。でも俺の場合は違う。少し極端な例かもしれないが、同じような経験をした方には共感してもらえると思います。俺は男ばかりの、しかも命がけの炭鉱掘削という仕事の現場監督をしていたから、〝人を使う〟教育を徹底的にたたき込まれた。常に事故と隣合わせで、ジンクスもいろいろあってね。「昨夜の夢見が悪かったので……」、そんな理由で休みがとれる職場だった。いろんなやつがいたし、けっこうな人数を動かす立場にいたからきつかったね。で、あるときハッと気がついた。初めての人と出会うと、こいつはどんなやつだろう?見定めるというのか、値踏みするような、いや~な感覚が頭をもたげてくる。もう、退職してるのにだ。ガックリきましたね。やめようやめようとしてもそのクセが顔を出す。すっかりマインドコントロールされちまっている……コワイもんです。いばりたいとか、見下すとかそんなつもりは毛頭ないのに、無意識のうちにどんな人間かを量ろうとしている。そんな自分がいやでね。一匹狼でいくことにしました。最近になって、やっとそのクセから解放されましたが、親友と呼べる相手は高校時代で終わりましたね。

 でも、おもしろいもんで、「友達作りはや~めた」と決めたら、不思議と気持ちがラクになって、積極的ではないけれど、ご近所さんとは仲よくはさせてもらっていますし、いないと言ったって、よく見りゃあ数は少ないが高校時代の親友も元気でいるし、趣味や仕事を通してつながる人たちも出てくる。友達がいないと嘆く人にも必ず誰かいるもんですよ。そこをないがしろにして、ムリに新たに求めても、せいぜいグチの相手をさせられるか、妙な勧誘に巻き込まれるかでロクなことはありません。家族もいる。好きなことをして楽しくしていれば、そのつどそのつどで気の合った仲間ができてくるものです。親しいと思えば遠慮もなくなる。競争心や過大な期待、甘えも出てきかねない。定年後は〝知り合い以上、友達未満〟。それで満足しよう。今さら友情論を戦わせる年でもあるまい。出世競争で酸いも甘いも味わってきた者同士、つかず離れずが心地よい。