老子と暮らす

老子と暮らす―知恵と自由のシンプルライフ

 10年近く前に読んだ本からのメモが出てきて、改めて大切なことだなと思ったので、再度書きとめておきます。

 「“人間の世界”と“宇宙意識の世界”との間にいる自分のバランスをとれ」という言葉、心にとめていたいなと思いました。

 

P106
何よりもすすめたいのは
「水のようであれ」ということだ。
水はあらゆるものに生命を与え
あらゆるものを養いそだてる。
そんな大変な力をもっているのに
争わないのだ。
人のいやがる低いところにも
流れ込んでゆく。そして
タオにつながる人もまた水に似て、
低いところを好む。
心を求めるときは
もっとも深いところを喜ぶ。
(後略)
 これは、僕が現代口語詩に訳した『老子』の、第八章の一部です。
・・・
 こんな数行でも、イメージと、人生への洞察の、みごとな融合が感じられるでしょう。そして明快きわまる比喩も。これが老子の表現の本質だと、僕は思っているんです。
 もうひとつ、先回りして言っておけば、何か抽象的ともみえる根本の概念をもちいるときでも、それがかならず、ごく普通の人の、普通の日常生活にも役に立つような方向に、転じてゆく。これもまた忘れてはならない、すぐれた老子の特徴のひとつです。

 

P245
 自由への願いは、けっきょく“我欲からの自由”です。さらにいえば、“自己からの自由”とも言えます。分裂した自己から、トータルに自分になればもっと平静なものになる、という意識なのかもしれません。
 これは誰もが心の底に持っている願望なのだと思います。
 ALONEという言葉は、“一人”という英語。けれども語源はall oneから来ているんですね。
 all oneの意味は「全体としての一」です。aloneには淋しいという意味もあるが、同時に積極的にI'm alone.といったら、自分全体、全体としての自分という意味にもなる。

 

P250
 古代中国の根本の考え方には、“陰陽”の思想があって、孔子老子の中庸はこの陰陽にもとづいているのでしょうが、二人は違った中庸観を語っているようですね。
「社会の中で生きる人間として、バランスをとれ」と孔子は言う。
 これに対して老子は、「“人間の世界”と“宇宙意識の世界”との間にいる自分のバランスをとれ」と言う。・・・
・・・老子は、そういう社会と、それを包むもっと大きな宇宙とのバランス、命の根源であるエナジーと社会の間にいる自分を自覚させるのです。