この星で生きる理由

この星で生きる理由 ―過去は新しく、未来はなつかしく―

 

 年末のお掃除で書類を整理していて、フリーペーパーの1ページを切り取ったものが出てきました。

 SALUS Sep.2022 に載っていた、理学博士・佐治晴夫さんのエッセイ「宇宙のカケラ」です。

 この連載がまとめられて「この星で生きる理由」というタイトルで出版されたそうで、またそれも読んでみたいと思ってます。

 

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 実は、がん細胞の元気さは、その細胞の構造から見て、人間が子孫をつくるために持っている生殖細胞の元気さと同じなのだそうです。とすれば、がんに罹患した場合、その生死にかかわる二つの相反する働きのどこに妥協点を見つけるかということがその答えの一つになります。これは、2世紀から3世紀を生きたインドの僧であり思想家でもあった竜樹(ナーガールジュナ)がいうところの中庸を思い起こさせます。この中庸とは、どっちつかずということではなく、相対するものを包括したうえで、一段高い視座から調和として見ることで、現代アメリカの心理学者、J.H.フラベルが定義づけている「メタ認知」、つまり、自分が認知している知識を、さらに高次の視点から再構築して理解していくという考え方です。この考え方は、陰陽が、互いに浸透しあいながら変転を続けて世界が構築されていくとする東洋の考え方に似ています。事実、人間の体の中では、各臓器が深くかかわりあいながら連携して働いており、食べすぎればお腹をこわして食欲にブレーキをかけ、緊張する場面では、心拍を速めて身体の運動機能保全の準備を行うというような自動制御機能が内在しています。実は、最近、一つの漢方薬の中に含まれる成分を調べてみたところ、ある機能を制止する働きと、逆に、その機能を増進させる働きの両方の成分が入っていて、それを服用すると、理由は定かではありませんが、どちらか一方を体が自動選択して治癒に導くという事実に直面しました。自然の一部である人間には、生命を持続させるためのなんらかの巧妙なプログラムがあるのかもしれません。そのような体自身が持つ機能に学ぶことがあるとすれば、人間社会においても、まず、対立を乗り越え寛容と協調の世界を目指すことの先に、持続可能な世界が見えてくるのではと、そんな気がしています。

 

 いつもブログを見てくださってありがとうございます。

 新年はちょっとお休みして、6日頃から再開しようかなと思っています。

 どうぞよいお年をお迎えください(*^-^*)