ここでは文章だけの紹介になってしまいますが、ヨシタケシンスケさんのイラスト、絶妙に面白かったです。
P51
心にはめる軍手のようなものが欲しい
軍手をはめるだけで、結構いろんなものをぐいぐい触れるようになるって、身体感覚として、おおーってなりませんか。
落ち葉だって、素手で触ると痛いけど、軍手すれば平気だし、二枚重ねにしたらもっと何でもがんがん触れる。つまり、素手じゃなきゃいいんだって思ったとき、ちょっとすっとしました。素手で触ろうとするから、うわーってなるんだなと。
心にはめる軍手のようなものが欲しい。
何かそういう、一旦クッションになるようなものを自分の心の中に、考え方の中に入れておけば、割といろんなことに接しやすくなるんじゃないか。
軍手をしたときの身体的な変化みたいなことを、心理的にも起こせたら、苦手な人たちのことだって、ちょっと楽に考えられるんじゃないか。
軍手をはめて触るのなら、実は触れるようなものって、本当はいっぱいあるんじゃないでしょうか。
P52
植物のように与えられる光と水の通りに
植物みたいでいられたらいいなと。これだけの水をあげて、これだけ光を当てるとこういうふうに育ちます。そういうわかりやすい因果関係でいたいと思うときもあるわけです。
植物のように与えられる光と水の通りに、って。
でも、人間はそういうわけにはいかない。
おんなじ条件でおんなじことを言われても、全く違う受け取り方をしたり、全く違うアクションを起こしたりする。だからこそ悲劇も喜劇も起きるわけなんですけれども。
植物の素直さというか、入れられたものだけちゃんと形になるっていう感じが、何かうらやましくもあり、でもつまんなくもあり、みたいなことですね。
P117
最近、気に入ってるのは、これ。
記憶があやふや、アーヤとフーヤ。かわいいですよね。
ちょっと絵本になりそうな感じしませんか。
アーヤちゃんとフーヤちゃんがいて、二人ともすごい記憶があやふやなんです。
で、二人のおじさんに、ウーヤとムーヤっていうのがいて。何か都合の悪いことを、すべてうやむやにしていくっていうお話なんですけど。
P126
「仕事は、愛だ」というとそれっぽいけど、「愛は、仕事だ」というとおこられそう。言葉の中には、「バカにしちゃいけないもの」がいくつかあるのだ。
仕事は愛を持って臨めみたいなことを言うと、ビジネス書っぽくていいんですけど、愛って結局仕事みたいなもんだよねって言うと、急にざわっとするわけです。
そういう言っていい、例えていい向きがある一方、反対の向きはだめ。
言葉の中には、ふざけたり、笑ったりしちゃいけないとされているものが、いくつかあります。そしてそれらは、増える傾向にあります。
でも、言葉はもともといいかげんなものなのだから、そのいいかげんさを逆に利用して、大事そうなものを「おもしろおかしいもの」として表現する努力が、やっぱり必要なんだと思います。