おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った

おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った: 世界ことわざ紀行

 こちらも金井真紀さんの本。イラストがとても魅力的でした。

 違う国のことわざって面白いです。

 

 タイの「表面に振りかけたパクチー」は、「中身はともかく、表面だけ取り繕う」という意味。

 タイトルの「おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った」は、フィンランドのことわざで、「意外なところに道がある、解決策はひとつではない」という意味だそう。

 ことわざではありませんが、フィンランド語には「Kalsarikännit(カルサリカンニ)」という言葉があり、「外出の予定がなく、自宅でひとり下着姿でお酒を飲んでいるときの気持ち」を表わすとか。おもしろいな~と思いました。

 南アフリカの「鼻が邪魔だと思う象はいない」は、「他人から見たら大変そうでも、本人は苦にならない」という意味。なるほど。

 ドイツの、大事な仕事や試合の前に気合いを込めて言うことわざ「Jetzt geht es um die Wurst!」は、「これからがソーセージだ!」つまり、「これからが正念場だ!」という意味。

 ルーマニアの「面と向かって緑色のことを言う」は「思っていることを率直に言う」の意味。緑色にはありのまま、自然体という意味があるそうです。

 

 以下は、ことわざ以外のところで印象に残ったところです。

 

P45

 アイスランド代表のサッカーの試合がある日、背が高くてもしゃもしゃ髭の男たちが代表ユニフォームに身を包んでカフェにたむろしていた。「お仕事は何を?」と尋ねると、「エンジニア兼ギタリスト」とか「カメラマンと食品加工」とか複数回答する。人口が少ないアイスランドでは、「みんなでいろんな仕事を掛け持ちしているのさ」とのこと。そういえば代表チームの監督は歯医者さんでもあり、ゴールキーパーは映画監督と兼業だった。

 サッカー選手にはビャルナソン、サエバルソンなど「なんとかソン」さんが圧倒的に多い。と思いきや、なんとアイスランドは苗字がなく、代わりに男性は「お父さんの名前+ソン(~の息子)」、女性は「お父さんの名前+ドッティル(~の娘)」をラストネームにするらしい。だから女子サッカーのメンバー表には「なんとかドッティル」さんがたくさん並ぶ。

 

P77

 「あのあたりでは、「乞食」に当たることばがないんですよ」と文化人類学者の真島一郎さんが言った。西アフリカのコートジボワール最西部、熱帯雨林に抱かれた小さな村。ダンという民族が仮面をつくったり、畑を耕したり、相撲をとったりして暮らしていた。1980年代後半、真島さんはそこに住みつき、ダン語の単語をひとつずつ教えてもらうところから調査研究を始めた。ダン人の村に限らず西アフリカでは、困っている人がお金や食べ物を分けてほしいと言ったときに、それを蔑んだりからかったりは絶対にしないのだという。誰もが助けてもらう立場になる可能性がある。だから「乞食」ということばは存在しない。「深いですよ」と笑った真島さんは、そのあとふっと遠くを見るような顔付き。ダン人の村は内戦に巻き込まれ、真島さんはずっと再訪できずにいる。

 

P78

 外国語はからっきし話せないし読めないのに、言語にまつわるおもしろいエピソードが大好きです。インドのサンスクリット語では牛を指すことばが、そりゃあもうたくさんあって、たとえば「2歳の牛」と「ひと組の永久歯が生えた2~3歳の牛」と「ふた組の永久歯をもつ3歳の牛」は別の単語だなんて聞くと思わず顔がほころびます。多くのヨーロッパ人にとってギリシア語は習得がむずかしいことばだと考えられていて、「It's Greek to me(それは私にとってギリシア語だ)」は「ちんぷんかんぷんだ」を意味する慣用表現。それだけでもニヤニヤしちゃうのに、ギリシア人は「ちんぷんかんぷん」と表現するのに「Mou φαιvovται κιvεζικα(それは私にとって中国語のようだ)」と言うんだそうです。あぁ、ちんぷんかんぷんの連鎖!たまりません。