100歳の生きじたく

100歳の生きじたく

 吉沢久子さんの本、久しぶりに読みました。

 ここまで受け流すことが私にできるだろうか・・・たぶんムリです(;^_^A

 

P57

「ご主人は、本当にいい人と結婚しましたね」と言われたことがあります。私も、本当にそう思います。

 夫は、お坊ちゃん育ちで金銭感覚ゼロ。お金は使ういっぽうだから、私が仕事をして一生懸命お金を稼いで、家事も全部やって。さらに毎日、夫が自分のお客さんを連れてきて宴会をしても、いやな顔ひとつしないわけですから。

 でも、なぜこういうことができたかというと、夫が怒るとうるさい人だったからです。そういう育ち方をしているので、がまんすることができない人でした。だから、なんでもすぐ怒るのです。

 怒るのは、私に対してだけではありません。

 あるとき、うちに来ていたお手伝いさんが、隣の家にいっておしゃべりをしていて、しばらく帰ってこなかったのです。

 それで、私に向かって怒るのです。

 私は、「私が怒られる理由がわからない」と言ったら、「相手がいなくて、怒れるか!」と怒鳴るのです。要は、お手伝いさんを怒りたかったけれど、お手伝いさんがいないから私に怒ったというわけです。

 そういう人と一緒に暮らしていたからでしょう、次第に話は半分しか聞かないようになりました。だって、まともに話を聞いていたら、こちらがおかしくなってしまうでしょう。

 夫の友人の女性作家が、よく家に遊びにいらしていたのですが、ある日、なにかで夫が怒りだして、彼女があっちへ行ったり、こっちへ行ったりすると、彼女のあとを追っかけて怒鳴っているのです。

 それを見て、思わず笑いだしてしまいました。すると、夫も冷静になったのか、「ハハハ」なんて、笑われた自分に照れ笑い。ですので、わが家は夫婦ゲンカが深刻になるようなことはありませんでした。

 何か言いたいことがあっても、言い合いが長く続くのがいやだったので、「はいはいはい」という感じ。

 そうやって受け流す術も大切です。

 

 怒りっぽくて、手のかかる夫だったので、何度も「離婚してやろう」と思ったことはあります。でも、こちらが「いつでも出ていきますよ」と言えば、困ってしまうのは夫ですから、笑っちゃいます。だって、本当に自分では何もできない人だったのです。

 ケンカをしていると、横で見ている姑のほうがゲラゲラと笑いだすこともあって、「おばあちゃんの育て方が悪いから、あんなになっちゃうんですよ」と冗談っぽく言ったこともあります。

 でも、私自身が仕事を持って、お金を稼いでいたというのは、すごくよかったと思っています。万が一離婚をしたとしても、いつでも自分ひとりで食べていけるくらいは稼げるという自信がありましたから。

 だから、夫とケンカをしても、メソメソすることなく、生きてこられたのです。

 昔の人は、離婚して家をでたら、どうやって食べていこうかと、まず、そこがいちばんたいへんですし、それを考えると離婚できないという女性が大半でした。でも、うちの場合は、反対に、私のほうが夫より働いていました。夫は嫉妬半分、「なんだ、そんなつまらない仕事」とか言ってましたけれど。

 当時は、電話で仕事依頼がくるので、聞き耳を立てずとも、なんとなくお互いにどんな仕事をしているかわかります。

 夫のところには電話がこないのに、私のところにばかり電話がくるので、子どもみたいに、むくれてしまうのです。

 そんなときは、夫にいちいち関わっているとたいへんなので、すましてこちらも知らんぷり。あまりにも夫が絡んでくるようだと、プチ家出をしました。電車に乗って、横浜あたりまで行って、海を見て帰ってくるのです。

 もう、何度もプチ家出をしました。

 自分で好きなところを歩いたり、ひとりでコーヒーを飲んだりしていると、だんだんと気分もよくなってきます。

 私はクヨクヨしたり、一つのことでずっと恨んだりはしないので、「おばあちゃんにシューマイを買って帰ろうかしら」と、夕方、スッキリした気分で家に帰ります。