トラブルへの対処法

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)

 こういう考え方は大事だなと思いました。

 

P256

 ・・・トラブルでは、「飛行機がキャンセルになった」「予約したはずのホテルが満室といわれた」「迎えに来るはずのガイドや車が来ない」といった類です。これらは日本ではトラブルですが、たいていの発展途上国ではトラブルの範疇にさえ入っていません。

 こういった手違いに関する私の対処方法は、次の3つです。

①事前に何度も確認する→現地の業者がポカミスをおかさないよう、気をつけるのも客の務めと割り切っています。

②現地では10分以内は誤差の範囲だと理解する。ただし15分以上の遅れがあったら、すぐに対応を取る→いつまでも「どうしよう?もう少し待ってみる?」などと悩むのが一番の時間の無駄です。自分なりの「待つ限度」を決めておくと行動が早くなります。

③お金で済むことはさっさと諦める→旅行中はお金より時間の方がよほど大事です。

 また、「ホテルの部屋でお湯がでない」「クーラーが効かない」というレベルだと、もはやトラブルとも言えません。こういう時は、つぎの二つが基本です。

①笑顔で、はっきりと、リクエストする

②問題の解決方法は自分で考える

 この「笑顔でリクエストする」のがとても大事です。多くの人はトラブルがあると怒ります。しかし怒られると相手は嫌な気分になります。

 日本では、受付のスタッフに問題があると伝えれば、彼らはそれが誰のミスであっても、「自分達のホテルがお客様に迷惑をかけている」と理解します。しかし海外では、受付スタッフは「部屋でお湯がでないのは、設備係のせいであって自分の責任ではない。それなのに、不当に自分が怒られている」と感じます。多くの国では各スタッフの仕事は完全に分断されており、彼らは自分の仕事のために時給で雇われているにすぎません。

 だからこういう場合、受付スタッフは設備係に電話をして終わりです。設備係がすぐに来るかどうかなど気にもしません。そうであれば、受付の人にむやみに怒るより、「あなたのミスじゃないのに申し訳ないんだけど」という気持ちを笑顔で表現し、受付の人に気持ちよく働いてもらうほうがよほど得策です。

 もうひとつ大事なことは、「問題解決」は自分でやった方が早いということです。たとえばクーラーが効かない場合、「クーラーを直してもらうべきか、部屋を変えてもらうべきか」という判断は、相手に任せず自分で考えるべきです。さらに、他の部屋も満室だと言われた場合はどうするのか。ホテルを変えるのか、部屋代のディスカウントを要求するのか、それとも「扇風機はないか?」と聞いてみるのか、など、解決方法については、自分で考えた方が圧倒的にいろんな手立てを思いつきます。

 なぜなら、客にクレームをつけられたホテルの従業員には、「問題を解決しよう」という気があまりないからです。彼らは何も困っていないのです。困っているのは客である自分です。だったら自分が問題の解決方法を考え、それを彼らに提示して、対応可能かどうか確かめた上で指示する……日本以外の国では、これが最も効果的な対処方法です。

 これらは私が海外で何度もトラブルに遭いながら学んだ対処法ですが、そういった経験を繰り返すと「日本は本当にいい国だ!」と心から痛感します。サービスレベル、ホスピタリティレベルにおいて、この国は世界最高です。・・・