過去・現在・未来

この星で生きる理由 ―過去は新しく、未来はなつかしく―

 印象に残ったところです。

 

P62

 ところで、あなたは、過去のことは分かるけれども、未来のことは分からないから不安だなどと思ってはいませんか。でも考えてみてください。私には、あなたがこの本を手にとる以前のことは一切分かりません。・・・しかし、この本を手にとった後のあなたの未来は予想できます。手にとった本を棚に戻すか購入するかのいずれかでしょう。過去よりも未来のほうが予測しやすいのです。より近い未来ならば、なおさらです。講演会場に集まってくる聴衆がどこから来たのかという経路を推測するのは、あまりにも多様で難しい。けれど、講演が終わった後の聴衆の行動はどうでしょう。会場の出入り口から出ていくであろうという予想はほぼ確実です。

 私たちは、未来を変える自由を「今」持っています。そして、「今」という瞬間は、過去からの集積の結果としての「今」なのです。これからの未来をどう生きるかによって、その時々の「今」の集積として降り積もっていく過去は、未来によって新しく塗り替えられていくことになります。つまり、その時々で出合った出来事の良し悪しの評価は、その時点ではできなくて、そのできことの後にやってくる未来が、それまでたどってきた過去を決めるということですね。過去が未来を決めるのではなく、未来が、それを生み出した過去の価値を決めていくということです。いいかえれば、「これから」が「これまで」を決めるということです。過去も未来も、すべて「今」のなかに含まれているのですね。過去にこだわり続けることには、意味がありません。大切なことは、いい未来を夢見て、「これから」の第一歩を踏み出すことです。とても感覚的な表現ですが、過去は新しく、未来はなつかしいものなのかもしれませんね。

 

P73

 実は、最近の研究結果からいえば、人間には、ひとつの目的を設定すると、自分の意識としての自覚はなくても、周囲の状況から、その目的達成のために有利な条件を自動検索するような機能が脳に備わっていることが分かっています。つまり「思えば叶う」という状況が生まれるというわけです。一昔前までは、単なる精神論だとして片づけられていたことにも科学で説明できる時代になってきたのは興味深いことですね。さて、あなたの今夜の楽しみは?

 

P236

 現代物理学では、実体としての過去も未来も存在しないと考えています。今、まさに過ぎ去ろうとしているこの瞬間という時間を創出する営みこそが、生きているという現実なのかもしれません。