頭って・・・

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)

 ちょっとしたことが、考えや判断の決め手になっていて、実はまったく意味がない、みたいなこと、たくさんあるんだろうな~と・・・

 

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 頭の中に1から10までの数字を一つ思い浮かべてください。きちんと思い浮かべたでしょうか。

 思い浮かべた数字が、もし偶数だったら500円差し上げます。さて、あなたが考えた数字はいくつですか?

 本当は奇数を思い浮かべたのに、ウソをついて偶数を答える人がいるかもしれません。

 こうした状況で、できるかぎりウソをつかれないようにするには、次のどちらの言い方がよいでしょうか。

① ウソをつかないでね

② ウソつきにならないでね

 

答え ②ウソつきにならないでね

 

 この現象は犯罪心理学の研究からわかってきました。そもそも犯罪者はなぜ罪を犯すのでしょうか。好んで犯罪に手を染める人は少なく、止むに止まれず悪事に走ってしまうことが普通です。

 このとき「自分は本当は善良な人間だが、今回ばかりは特別だ」と自分の心に蓋をしています。つまり、「本来の人格」と「実際の行動」は別であるとするわけです。

 設問を見てみましょう。選択肢①は「行動(〇〇すること)」を否定しますが、選択肢②は「人格(〇〇であること)」を否定します。脳は「一回の過ち」を否定されるより、「人間としての本質」を否定されることに抵抗を感じます。

 実験によれば、選択肢①では約30%の人がウソの申告をしましたが、選択肢②ではウソをつく人はほぼいませんでした。

 ・・・

「怠けないで」より「怠け者にならないで」、「私の状況を理解してください」より「私のよい理解者になってください」、「泣かないで」より「泣き虫にならないで」などなど、多くの場面で応用できそうです。

 

P117

 レストランが二つあります。一つは自宅の隣、もう一つは車で15分ほどのところです。

 料理の美味しさを尋ねると、どの回答が多いでしょう。なお本人は、二つのレストランがチェーン店で、実は同じ料理を出していることを知りません。

①どちらも同じ美味しさに感じる

②近所のほうが美味しいと感じる

③遠方のほうが美味しいと感じる

 

答え ③遠方のほうが美味しいと感じる

 

 脳は自分のとった行動から、自分の心理状況を推測します。設問の状況では、「わざわざ遠くまで食べに行くくらいだから美味しいはずだ」と、自分の努力を正当化します。

 この現象は日常の多くの場面で見られます。

 たとえば、給料は高いほうがよいとは限りません。なぜなら「安い給料で働いている」→「もし仕事がイヤならこんな安月給で頑張るはずがない」→「なるほど!仕事が面白いのだ」と無意識のうちに推測を進めることで、心理状態が変化し、仕事への愛着が増すからです。

―自分で買ったものは、無料でもらったり借りたりしたものよりも楽しめます。

―厳しい試験を受けて入った組織には愛着がわきます。

―苦労しても手に入らなかったら、「とくに欲しくはなかった」と評価を下げます。

―本書を119ページまで読み進めてきた読者は、「ここまで放り出さずに読んできたということは、この本は面白いのだ」と評価を高めます。

 こうして自分の行動に沿うように、無意識のうちに心の内面を置き換えるのです。

 この現象は、恋愛テクニックにも応用できます。好きな相手には、つい手伝ってあげたくなるものですが、本当は逆です。手伝ってもらうほうが効果的なのです。なぜなら相手の心には次のような変化が生じるからです。

「こんなに手伝っている」→「嫌いな人を手伝うはずがない」→「なるほど、この人を好きなのだ!」