日本語って・・・

記憶がウソをつく!

 こう考えると、日本語を後から習得された外国の方って、ほんとにすごいです。。。

 

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養老 ・・・日本語って特殊でね。日本語は読みの場合に脳の二カ所の領域を使っているんです。これはたぶん間違いない。なぜかというと、日本人が何らかの脳の障害によって失読症になった場合、かなが読めなくなる症例と漢字だけが読めなくなる症例と、別々のケースがあるんです。こういう分離は外国語にはあり得ない。なぜなら、まず普通は単一文字ですからね、かなと漢字が交ざっているようなことはない。

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 ・・・日本語というのは、基本的に音訓読みをする。訓読みなんていうのがある国は日本だけですよ。つまり、外国語を日本語で読んじゃったわけです。だから、「美しい」の「美」を「ビ」と読むのなら韓国と同じですが、「しい」と送りがなをして、「ウツク」と読むっていうのは、ある意味でむちゃくちゃでしょう。それができるのは日本語だけなんです。

 で、日本人の脳の中でそれをやる場所というのが、じつは万国共通で普通に文字を読む場合に使われる場所と違う場所なんです。ですから日本語の場合、普通の言語に比べて、読みの部分を倍使っていることは間違いない。だから昔からいう「読み、書き、そろばん」で、読みと書きが違うんですよね、日本語は。しかもそこには論理がまったくないでしょう。つまり、漢字の音訓読みを習っていくときに、理屈があるかというと、ないんですよ。

 

古館 「ウツク」ですもんね。

 

養老 そうでしょう。「重」という字を見てください。下に「い」って送れば「オモい」だけど、「ねる」とふれば「カサねる」ですね。そういうのを子供に覚えろと言ったって理屈なんかないでしょう。さらに、下に「大」が付いたら「ジュウダイ」だし、「複」が付いたら「チョウフク」と読めなんて言われるんですよ。

 

古館 もう、死にそうになっちゃいますね。

 

養老 そういうのを外国人に覚えさせようとすると、怒りだします。理屈がないって。ですからそういう意味で、日本語の場合、言語の中の論理性がまずちょっと違う。複雑になっているということです。だから脳を倍使っているわけで、それでおそらくいろいろな副作用が起こっていると考えられます。

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 日本人が昔から外国語が下手だっていわれているのは、音声言語が下手だってことなんですよ。喋るのが下手なんであって、読める人はたくさんいるんです、英語だったら。「読み、書き」っていう日本語の頭があって外国語を習うものだから、どうしても、読めるようにしようとする。それで、喋るほうがあとになる。教育がそういうふうに読むほうを中心で考えていくから、英語を何年やってもうまくならないって話になる。要するに、読めるけれど喋れないってことで。

 

古館 副作用っておっしゃいましたけど、それって先生、ある意味では日本人っていうのは、疲れていますよね。だって、漢字だ、ひらがなだ、カタカナだ、下手したらヘボンさん、ローマ字だって。

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 英語も入ってきて、すごくたくさん脳を使ってますしね。しかも尊敬語に丁寧語とか、ますますもって左脳が大変ですよね。・・・

 なんの裏付けもないけど僕が感覚的に面白いなと思うのは、たとえば渋谷とか歩いていてふと耳に飛び込んでくる「ぜってーちげーよ」といったような若者言葉なんですよ。これには最初、僕も驚きました。「絶対違うよ」って言って欲しいわけじゃないですか。でもビックリはするんだけど、「ぜってーちげーよ」って車の中で何度か反芻してみると、意外と楽しくなってくる。

 抑揚も付けやすいし、繰り返しているうちに、「フォルツァ・フェ・ラーリ」とか「マンマ・ミーヤ」とかイタリア語っぽいノリになってきて、しまいにゃ「スパゲッティ・ぜってーちげーよ」までいって、もうノリノリ!・・・楽な感じがするんです。

 

養老 それは僕も言えると思う。要するに脳がなにか、いちばんエネルギーを節約するポイントを、いつも探しているっていうことは間違いない。