しゃあないな

不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方

 よくあるお悩みについても語られていました。

 

P76

奥田 先生は「人に嫌われたくない」と思ったことはありませんか?今も昔も日本人は誰かに嫌われるのがすごく苦手でしょう?・・・

 

中村 私だって人に嫌われるよりは、好かれたいって思うよ。物心ついた頃は、近所付き合いが今とは比べ物にならないくらい濃密やったから、嫌われて村八分にあったら生きていけなかった。

 戦時下で言論統制もひどかったから、お国の方針と反対の意見を言おうものなら、嫌われるどころか憲兵にしょっぴかれて留置場に放り込まれたし。でも今は、そんな時代と違うやろ。日本全国、どこでも好きなところへ行って生きていけるやろ。それほど皆に好かれようとしなくてもええんと違う?

 ・・・

 私の子どもの頃と違って、平和で、自由に動ける時代なんやから、のびのび自分らしく生きたらええと思うんやけどね。その気になったら海外にも行けるしなぁ(笑)。

 

P116

奥田 ところで先生、日常生活でふと湧き起こる不安といえば、もう一つ、やっかいなものがありますね。いわゆる「自己嫌悪感」です。

 

中村 たしかに、外来でも「ときどき、自分のことがすごく嫌いになる」という人、いたね。

 ・・・

 ・・・私も若い頃はよく自己嫌悪を感じていたし、今もときどきあるよ。

 

奥田 ・・・先生でも、自己嫌悪感に襲われて、自信をなくされることもあるのですか?なんだか安心しました。ちなみに先生は、そんなときはどうしていらっしゃるんですか?

 

中村 もともと私は、自分に自信がこれっぽっちもないし、必要とも思わん。「自分なんかこんなもんや」と思っているから、失敗しても当たり前やし、人とうまく付き合えなくても当たり前。

 それでもうまくいかない日には自己嫌悪を感じることもあるから、そういうときにはお酒を一杯ひっかけて、さっさと寝る!これに尽きるわな。

 ・・・

 自己嫌悪になるのは、自分ができなかったことや、失敗したことばかり思い出しているときやろ?そもそも自分なんか、もともと大したことがないやつやと思っていたら、失敗しても「まあ、しゃあないな」って自分を許せるはずや。

 そもそも失敗して落ち込んでいるときに、あれこれ考えてみたところで、いいことが思い浮かぶわけないからね。私は「まあ、今回はしゃあないな。次から頑張ろ。とにかく寝よ」って寝てしまっていたね。

 ・・・

 とにかく極力、自分のしたことの正解・不正解を判定したり、評価したりしない方がいいね。自分が幸せかどうか、人生が成功しているかどうかなんかも、あまり深刻に捉えないでええと思うよ。結局、幸せも成功も、刻々と変化していくものやからね。