楽しむことと感謝

前祝いの法則

 楽しむことと感謝が日常に・・・いつもそうありたいです。

 

P115

 1991年の話です。

 巨大台風で、青森県のリンゴが9割も落ちてしまい、多くの農家さんが悲しまれました。しかし、このとき、悲しまなかった農家さんがいたのです。

 なぜ、悲しまなかったと思いますか?

「落ちなかったリンゴを『落ちないリンゴ』という名前で、受験生に売りましょう。1個1000円で」

 すると、なんと、飛ぶように売れたのです。

 あの巨大台風でも落ちなかったリンゴだって、受験生も大喜びで、農家さんも助かったんです。

 同じ現象にもかかわらず、悲しむこともできれば、楽しむこともできます。

 

P194

 感謝が大事だと「知識」ではみんな知っています。

 でも、知識だけでは人は変わらない。実際にやってみること、実践していくことです。そのための有効な1つの方法が手紙を書くことです。

 手紙を書きながら、相手への自分の思い、感情をしっかり「感じる」ことです。

 その自分の感じたことを最後に人に「シェア」する。・・・

 ・・・

 感謝の手紙を書いていると、泣き崩れる子も出てきます。

 それを何度も見るなかで気づいたんです。

 みんな泣くくらいの感謝をほんとはすでに持っていると。

 ほんとは、心の奥深くでみんなすでに感謝しているんです。

 手紙を書くことで、意識をしっかり向けると、感謝があふれます。それをしっかり感じることで変容が起こります。

 さらに、その思いをシェアするなかで、人は自然にその感謝の恩にむくいたくなるんです。誰かを心から喜ばせたいと思うのです。

 

P205

 ・・・生活習慣が変われば、心が変わっていくのです。

 良い習慣が良い心を育むんです。

 高校野球でも、甲子園常連校ほど生活習慣が素晴らしいんです。

「野球の内に野球なし。野球の外に野球あり」

 この言葉は、松井秀喜さんの母校、星稜高校本田実先生に教えていただいた言葉なんですが、その星稜高校では、トイレ掃除は、3年生にならないとやらせてもらえません。トイレ掃除は、それほど重要な位置づけなんです。

 よく、「人生を変える」という言葉が使われますが、その「人生」とはなんでしょうか?

「人生」とは「日常」のことです。

 つまり、人生を変えるとは、日常を変えることなんです。

 挨拶や掃除などの生活習慣のなかにこそ、一番大切なことが詰まっているんです。

 良い習慣が、あなたの心を明るくし、その明るい心が、明るい未来を作ります。

 だからこそ、「予祝」の習慣を作ってほしい。喜びのなかで生活する習慣を作ってほしい。「未来」とは「あなたの心の状態」だからです。

 

P239

 ダイエットにみんな失敗するのは、「痩せなくてはいけない」という恐れを動機としてがんばっているから続かないんです。

 しかし、ダイエットにみんな成功するタイミングがあって、それは結婚式が決まったときだそうですが、きれいな自分を見せたいとワクワクしているから、このときばかりはダイエットに成功するんです。

 西田文郎先生はこう言っています。

「正しいことは続かないけど、楽しいことは続く」

 脳は楽しいことが大好きなんです。楽しくないことはほんとは1ミリだってやりたくないんです。

 だから、やってることにワクワクしてないってことが、実は人生最大のリスクなんです。

 1998年夏の甲子園の準決勝。明徳義塾高校VS.横浜高校

 あの伝説となった試合には、実は、予祝の真髄が隠れていました。

 横浜高校を引っぱるのは、あの松坂大輔投手。

 しかし松坂は、その前日のPL学園との試合で延長17回を投げ抜き、準決勝では先発できませんでした。

 その松坂なき横浜投手陣に明徳打線が襲いかかり、8回表を終えた時点で6-0と大きくリードされ、誰もが負けたと思いました。ところが、8回裏から横浜高校の快進撃が始まり、6-0から、なんと奇跡のサヨナラ勝ちを果たすのです。

 その問題の8回裏、いったいなにが起きたのか?

 円陣を組む選手たちに横浜高校渡辺元智監督が、あるひと言を告げた。すると、チームの空気が一変したのです。

 ・・・

 いったい、渡辺監督はなんと言ったのか?

 それは……。

「この試合は勝ち負けは考えなくていい。楽しめるだけ楽しんでこい!」

 ・・・

 最後の最後、「奇跡の快進撃」に必要だったのは、根性ではなかった。才能でもなかった。執念でもなかった。

 ただ、楽しんでくるという気持ちだったのです。