姿勢

もう一度、プロ野球選手になる。

 大谷翔平さんのとにかく楽しそうに野球をする姿、イチローさんの道具を大切にする姿勢・・・新庄さんもやっぱりそうなんだ、みんなこういう姿に感動するのかな、と思いました。

 

P88

 日本14年、メジャー3年の現役生活で、ぼくは一度もシーズン打率3割に到達したことがない。

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 メジャー挑戦を決めたとき、スポーツ新聞に「日本の恥」と書かれた。・・・

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 でも、ぼくは結果を出したよ。

 メッツで1年目から四番を打ったんだ。すごいよ、日本から来た年俸2200万円の新参者が、あのマイク・ピアッツァを押しのけて四番に座ったんだから。

 ジャイアンツでは、ワールドシリーズにも出場した。でも、ぼくがひそかに誇りに思っているのは、3年間の通算打率だ。

 2割4分5厘。

 阪神時代の通算打率、2割4分8厘とほぼ変わらん。

「新庄は通用しない」って言ってた人、どこ行った?

 たしかにメジャーはすごい世界で、最初はぼくも怪力自慢の大男たちに圧倒された。

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 環境が全然ちがうところに行ったら、とまどいだらけで本来のフォームを忘れてしまうもの。でも、ぼくはいつものスタイルをつらぬいたよ。

 それは現地の報道にも表れている。

 手厳しいことで知られるニューヨークのメディアが、いつからかぼくのことを「SHINJOY(シンジョイ)」と呼びはじめたんだ。メジャーでも、ベースボールを楽しもうとするぼくの姿勢が伝わったんだ。

 思えばぼくは、少年時代からずっと同じスタンスで野球をやってきた気がする。

 小学5年生のとき、ぼくが仲間を集めて結成した「長丘ファイターズ」は、小学校の隣の空き地で毎日日が暮れるまでボールを追いかけていた。

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 つまり、空き地も甲子園もメジャーも札幌ドームも、ぼくにとっては同じなんだ。

 そう、野球少年のままプロ野球選手になり、メジャーリーガーになっていったんだ。

 

P133

 最初にグラブは相棒と書いたけど、実際にぼくはグラブに声をかけていた。

 試合が終わると、いつも「サンキュー!」と感謝の気持ちを伝える。

「気取ったことを」と言われるかもしれないけど、いつもそうしていた。

 ぼくがいいプレーができるのはグラブのおかげ。感謝の気持ちを素直に伝えることで、次もまたグラブが応えてくれるような気がするから。