スリルライフ

スリルライフ

 新庄さんの本、新しいのが出てたので読みました。面白かったです。

 

P36

Q4 意外と丁寧、意外と礼儀正しいと言われませんか?

 

 しょっちゅう言われます。みんな僕のことを、相当無茶苦茶な人間だと思っているんですかね?昔から話し方は丁寧だったと思います。礼儀に関しては、親の躾がよかったんでしょうね。僕がぶっ飛んだことをやってもそれほど怒られないのは、ちゃんと礼儀を通すからかもしれません。オヤジからいつも「相手のことを考えて行動しろ」と言われて育ったので、自分のことで人に迷惑はかけたくない。

 自分が楽しければいい、自分さえよければいいという考えは、まったくないです。自分も楽しむけど、まわりの人にはもっと楽しんでほしい。いつもそんなふうに考えて行動しています。

 

P40

Q6 食に対するこだわりは?

 

 なんでも好きというか、まったくこだわりはありません。子どものころは、家が貧乏だったので、とにかく食べられればそれでよかったし、今もそれは変わりません。普段の食事もコンビニがあれば十分。菓子パンを食べて缶コーヒーを飲めば、満足できます。

 タコの形のウインナーとか、レトルトのハンバーグとか、目玉焼きをのせてソースをかけただけのごはんとか、そんなのがあれば最高ですね。

 ただその時々で、自分の体に必要なものは感覚的にわかります。頭を使っているときは糖分不足を感じるし、血流の流れがよくないからキウイを食べようとか、腸の調子が今ひとつだからゴボウやセロリを食べようとか、普段飲まない赤ワインを飲みたくなるのは、フラボノイドが足りてないからかなとか、体が求めているものがわかる。そうしたら、スーパーに行ってそればかり食べる。セロリを3日間食べ続けるとか。それだけですぐに体調がよくなります。

 

P50

Q12 本を一冊も読んだことがないというのは本当?

 

 はい、人生で一冊もないです。僕は子どものころ、8回交通事故にあったんです。その4回目のときから字が読めなくなりました。まったく読めないわけではなく、文章として理解するのにかなり時間がかかるんです。難読症とか呼ばれるらしいんですが、映画監督のスティーブン・スピルバーグとか俳優のトム・クルーズも僕と同じだと聞いたことがあります。

 僕の場合、たとえば「花が咲く」という文章があったとして、まず「花」という単語に対していろんなことが浮かんでしまう。「なんの花なんだろう」「どんな色なんだろう」「大きいのか、小さいのか」とか。次に「咲く」を読んでも「いつ咲くのか?」「どこで咲くのか?」「一輪なのか、たくさんあるのか」と、同時に浮かんできて先に進まないんです。だからSNSのような短い文章ならいいんですが、小説のような長い文章は2,3行読んだだけでぐったり頭が疲れてしまう。

 でもこれも悪いことばかりではないと思っています。まずどんどんいろいろなアイデアが浮かんでくるというのは、野球でもパフォーマンスでも役に立つ。人よりも多くのパターンを想定して、そこにどう対処するかも瞬時に考えることができる。ひとつのことから先を読む能力は、人より高いと思っています。

 もうひとつは、自分の言葉でしゃべることができること。本を読んでいないので、誰かの真似のような発言をしないで済む。自分の気持ちや考えをリアルでストレートな言葉で伝えることができていると思います。僕としては普通に答えただけの言葉が❝新庄節❞みたいに言われるのもそれが理由なんです。

 できることとできないことは、誰にでもある。僕自身は本が読めないことをあまり気にしていません。できないことを考えるよりは、できることをどんどん伸ばしたほうが絶対に楽しい。野球もそうだし、すべてのことがそうだと思っています。

 

P220

Q76 死への恐怖はありますか?

 それほど恐れてはいないですね。今まで生きてきて、常に完全燃焼してきたから、明日死んだとしても後悔はないと思います。もうひとつ、そんなふうに思えるのは、親父の影響もあると思います。12年前、親父は70歳のときにがんで亡くなりました。

 ・・・最後になるかもしれないけどって2人で病院の外に飲みに行ったんです。病院の先生にも「もう死ぬんだから」と話して許可をもらって。そのあと僕はバリに戻ったんですが、2カ月たっても親父は死なない。親父は親父で「剛志、なかなか死ねんばい。検査ばっかりで毎日つらか。俺、男前なのに、こんな痩せた姿は人に見せたくなかばい」とか言ってるんです。死ぬのもなかなか難しいんだなあと、そのとき思いました。

 それからですかね、僕が死ぬことを恐れなくなったのは。生きることも死ぬことも自分ではコントロールできない。そんなことを気にしてても意味がない。今を精一杯生きていればそれでいいんだと強く思うようになりました。