印象に残った話です。
みうらじゅんさんのお話から。半分冗談みたいなトークでしたが、確かにそうかも、という説得力が。
P50
・・・マイブーム以前に主流だったのは「好きか嫌いか」でした。「好きか嫌いか」についてハッキリ言えないと、受からなかったんです。・・・だけど、マイブーム以後は「好き嫌い」じゃなくて、「おもしろいか、おもしろくないか」が主流になってきてると、僕は聞いてます。ときには「キミ、それはおもしろいのかね」って、聞かれることもあるでしょう。そのときには、「いや、きちんと話し合えれば、おもしろさをわかってもらえると思います」とか答えてくださいよ。要するに、情熱を見せるということです。
P194
金井 以前、楽器メーカーのヤマハに和智正忠さんという常務がいらしたんですね。音楽に触れること、特にリズムを刻むことが人間の健康にプラスになる、という研究をしているお医者さんから連絡を受けて、アメリカまで会いに行った人なんですが、結局、ヤマハを辞めて学生に戻ったんです。
糸井 ほう……。
金井 で、その連絡をくれたお医者さんといっしょに論文を書き、それがアメリカの雑誌に載って、博士号まで取った。つまり、自分の会社のつくってる商品が、世のなかの役に立ってるということを示したんですよね。会社を辞めてまでして。「仕事」を「遊び」のように楽しめる人でないとできないことが、開発の世界やものづくりの世界にはあって、そういうのにふれると、本当に感動するんですよ。
こちらは、矢沢永吉さんとのお話。
P224
糸井 ちっちゃいころから、命令するタイプ?
矢沢 いやいや、そんなことないけどね。
糸井 でも、子分じゃないでしょ。
矢沢 うん。タイプ的に子分になれないんだね。
糸井 子分になる才能がない(笑)。
矢沢 ない。子分のほうが楽だと思うときもある。とらえかたはいろいろあるだろうけど、子分のほうが楽だとは思うよ。
糸井 でもやっぱり、「BOSS」なんだね。あの、子分ってさ、「BOSS」からすると、放っておくこともできるじゃない?でも、「もっとこうしたほうがいいぞ」って……。
矢沢 そうなのよ。放っときゃいいのに、見えちゃうのよ。
糸井 「もっと、よくできるぞ」とか。
矢沢 そうそう。気づいたら手取り足取り教えてるところあるよね。あれ、よくないよね。
糸井 人の世話も焼くじゃん。
矢沢 あのね……カメラに向かって言います。
糸井 笑うよ、これ(笑)。
矢沢 (自分の胸に手を当てながら)すごくやさしいの、すごく面倒見いいし、これ、冗談じゃないよ、本気本気。
糸井 ほんと(笑)。
矢沢 そうだよね。
糸井 僕が覚えてる話は、ある日、永ちゃんとこの社員に、朝、電話がかかってきて、「はい」って出たら、永ちゃんからで「おまえの家、探しといたぞ」って。
矢沢 ははは(笑)。
糸井 不動産の広告見て、今から電話番号言うから、電話してすぐ行けって。ローン組めばおまえの給料で何とかなるから、いい物件だから行け、急がないとなくなるぞって(笑)。
・・・
糸井 音楽家としてはともかく、経営者としての永ちゃんがたどってきた道は、平坦じゃないよね。
矢沢 問題ばっかりだよ。「何なんだよ、問題ばっかり起こりやがって!」って思うくらい、次から次、来るからね。
・・・誰かが言ったのよ。「それは矢沢さんが耐えうるから、神様が試練を与えたのです」って。ふざけんなよって。
・・・
糸井 ま、正直、永ちゃんになりたいかって言ったら、俺はなりたくないもんね。大変さを知ってるとさ。
矢沢 いや、そうかもしれないよ。
糸井 そうだよ。あんた以外には引き受けない。
矢沢 矢沢永吉を引き受けられるのは、俺しかいないと。
糸井 うん。
矢沢 あんまりおいしくないよ。
糸井 ははははは(笑)。
矢沢 ウソじゃないよ。あのね、なくしたものも、ものすごいから。窮屈なのも、ものすごいから。でもね、どのジャンルの人も、どの人も、それなりに、面倒くさいこともあれば、イヤな思いも抱えてる。大きさや場所は、違ってもね。すると、そこを、どう、いいふうに持っていくか、いいほうに考えるかということが大切で、そうやって、みんな生きてるんじゃないかな。
・・・
最近はね、そういった意味じゃね、「矢沢」を気持ちよく生きたいなと思ってる。一時期は、やっぱり、「矢沢」辞めたいと思ったこと何度もあるからね。その反発をエネルギーにしてた、みたいなとこあるよね。
・・・
・・・だからさ、みんな、僕も、あなたも、人のことをうらやましがってもしょうがない。