ヘンな科学

再開です(^^)

 

ヘンな科学 “イグノーベル賞” 研究40講

 人々を笑わせ、そして考えさせた研究に与えられる「イグノーベル賞」を受賞した研究を紹介する本、なんか面白そうと手に取りました。

 フンコロガシが天の川を頼りに進行方向を決めているなど、へぇ~という話がいくつも。

 こちらは生活に使えそうな研究結果です。

 

P16

 ・・・2008年に栄養学賞を受賞した、ポテトチップスに関するもの・・・ポテチを食べている間に美味しそうなパリパリ音を流すと、さらに美味しく感じることについて調べた研究で、オックスフォード大学のチャールス・スペンス教授と、共著者のマッシミリアーノ・ザンビーニ博士によって行われた。

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 ・・・2人はボランティア200人を集め、1人ずつ防音室でプリングルズのポテチを食べてもらった。・・・

 ボランティアには防音室でマイクと向かい合わせになり、ヘッドフォンを着けてもらった。マイクはボランティアがポテチをかじった時の音を拾っており、ヘッドフォンからはマイクが拾った音を流した。・・・その際、ボランティアには知らせずに、ヘッドフォンに流れる音を研究者たちがコンピューターで操作し、音を大きめにしたり、高音域の音(2~20キロヘルツ)を強めに出したりした。

 こうしてポテチの新鮮さとパリパリ度を評価してもらったところ、同じポテチでも音量を大きくしたり高音域を強く出したりした時のほうが、15%程度かみごたえが強く、新鮮に感じられることが分かった。音が、食べ物の味わいを変えた、というわけだ。

 ・・・また、別の研究者たちがこの発見をちょっといじり、ポテチの音をガラスが砕ける音に差し替えたところ、被験者の顎が固まってしまった、なんてこともあったそう。

 聴覚以外の五感も味の感じ方に影響しており、スペンス教授は研究を通して食品会社の商品開発やマーケティング戦略を手伝ったり、有名シェフとコラボしたりしている。これまでに行った研究として次のものがある。

 

・いちご味のムースは、黒い容器で出されるよりも白い容器で出されるほうが10%甘く感じる。

・コーヒーは、ガラスのコップから飲むよりも白いマグカップで飲むほうが2倍ほど濃く感じる。

・ヨーグルトの容器を70グラムほど重くすると、満腹感が25%アップする。

・食事の際に高い音域の音楽を聞くと食べ物を甘く感じ、低い音域の音楽や金管楽器の音を聞くと苦く感じる。

・人は、アルファベットの「k」に苦いイメージを、「b」に甘いイメージを抱く。

 

P50

 ・・・ミステリアスな響きが魅力的なディジュリドゥ。オーストラリア先住民族アボリジニの楽器で、シロアリが中を食べ尽くして空洞ができたユーカリの木から作られている。

 2017年の平和賞を受賞した研究によると、この楽器がひどいいびきや睡眠時無呼吸症候群の治療に効くというのだ。

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 この研究に携わったアレックス・スアレスさんも15年以上前、そんな症状に悩む患者の1人だった。

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 ・・・たまたま知り合いがディジュリドゥを吹いているのを見た。寝ている時に垂れてしまう喉周りの筋肉を鍛えるのに使えそうだと思ったという。

 ディジュリドゥにどっぷりハマったスアレスさんは毎日練習したところ、いびきや日中の眠気がみるみるうちに改善されたとか。そのことを聞きつけたチューリッヒ大学のミロ・プハン教授が、実際にスアレスさんと実験を計画して、効果を調べてみることにした。

 研究の対象は、中度の睡眠時無呼吸症候群を患うボランティア25人。ほぼ全員、いびきが悩みで研究に協力した。

 プハン教授らは、ボランティアたちに4ヵ月間、週5回ディジュリドゥを吹いてもらった。ボランティアたちは初心者向けのプラスチック製ディジュリドゥを支給され、レッスンを4回受け、1日20分間吹いたのだ。

 ・・・こうして4ヵ月間ディジュリドゥを吹き続けた効果は、結果に明確に表れた。ボランティアたちの睡眠時無呼吸症候群の重症度を示す数値は半減し日中の眠気が改善された上、彼らの配偶者やパートナーたちも、客観的に見ていびきが改善したと評価した。

 この研究が医学賞ではなく平和賞を受賞した理由は、パートナーのひどいいびきに睡眠を妨害されイラついていた人がよく眠れるようになり、平穏な家庭生活が訪れたからではないだろうか。

 では、なぜディジュリドゥの演奏が効果的だったのだろうか。

 上気道の開閉に関わる筋肉が鍛えられたのもあるが、「循環呼吸」という呼吸法を練習したことが効果的だったのではないかと、研究者たちは考えている。循環呼吸とは、楽器を演奏する時に、口から息を吐くと同時に鼻から息を吸う演奏法のことだ。息継ぎの際に音を途切れされない方法である。

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 研究者たちは、循環呼吸をすることで声道全体の筋肉が鍛えられ、症状が改善したと推測している。

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 スアレスさんは自らの経験を生かし、いびきや睡眠時無呼吸症候群の改善のためにカスタマイズしたディジュリドゥを開発した。その名も「スナドゥ(Snadoo)」。

 小さめに作ってあり、響きを抑えてあるため、本物のディジュリドゥほど近所迷惑の心配をしなくても良いのだとか。専用のスマホアプリと一緒に使うと、遊び感覚で楽しめるという。