運を巡らせる

ダメなときほど運はたまる ~だれでも「運のいい人」になれる50のヒント~ (廣済堂新書)

 桜井章一さんも、運を渡したりあげたりするという話をされてましたが、面白いなぁと思います。 

 

 P178

「三年目に優勝する」

 ゴールデンゴールズを結成したときから、こう考えてました。それも「運」で優勝してやるって。

 僕が選手に言うことも、大半は運に関することなんです。・・・

「お前はセカンドにランナーがいたら打てない。でも、そういうとき自分に腹を立てるのはよせ。お前はそういう運をもって生まれてきたんだからしょうがないの。チキショーって言葉を出すと、それはお前のおっかさんに向けて言うことになっちゃうよ。それじゃ母親に失礼だろう。そういうときは、自分の運がないということは、次のバッターに運を渡せるってことだな、と思いながらベンチに帰ってこい」

 ・・・

 ワンアウト二塁三塁なんていう場面で三振しちゃった場合は、自分が使えなかった運を次のバッターにまわそうと考えてほしい。バットを叩きつけたりせず、次のバッターに「運はお前に残しておいた」と言ってからベンチに帰ってきてほしいの。

 一人一人がこういう自覚をもつと、チーム内に絆が生まれて本当にいい運がまわるようになるんです。

 監督のいちばんの役目は、もともと運を持ってる選手と、その日の運を持ってる選手をうまく組み合わせて、運が滞りなく巡っていくようにすること。そのためには選手個人のことだけじゃなく、その家族や恋人の情報なんかも頭に入れて、計算する必要があるの。

 あるとき、勝負強いことでは定評のある選手がパタッと打てなくなった時期がありました。周辺の情報を集めてみたら、どうも彼女ができたらしい。で、その選手を呼んで言ったんです。

「お前、最近美人の彼女ができたんだって?そっちに運を使ったんで、野球の運が下がってるんだと思う。運を二つ重ねてもらおうとすると、運の神様に嫌われるの。今日から、バッターボックスに入ったら彼女の存在を払いのけて打ってくれ」

 そうしたらその選手、バッターボックスに入ったとき、隣にいる人を手で押しのけるような動作をしてからバットを構えました。これで久々のクリーンヒット。この打席以来、「ちょっとどいて」のしぐさをしてからバットを構えるのが彼のルーティーンになりました。