失敗や怒りについての考え方

若田光一 日本人のリーダーシップ~ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験II~ (光文社新書)

 宇宙飛行士の人間力のすごさに興味津々になり、こちらも読んでみました。

  

P188

「人間のやることに、失敗はあって当然です。私自身も、これまで失敗を積み重ねて学んできました」

「確かに我々はプロですから、同じ失敗を繰り返せば信頼はなくなります。そこで競争から脱落するので、二度は繰り返せない。そういう厳しさはある。でも最初の失敗には、寛容であっていいと思います。そしてリーダーである船長は、その失敗による影響をできるだけ小さなものにしなくてはならない。大きな問題に発展しないよう、チームを管理していかなければならないのです」

「重要なのは『失敗しないこと』ではありません。失敗しても、それを致命的な状態にまで拡大させないためのチームワーク、そしてリーダーシップを、きちんととっていくことだと私は思っています。ですから、会議とか打ち合わせみたいなところでは、妥協なく自由闊達に意見を述べ合ってもらう。そういう雰囲気をつくることを重んじました。そして、最終的にチームとして最も望ましいソリューションを見出すことに議論を持っていく、ということに留意しています。そういう環境づくりが、世界で勝負するリーダーにとっては、重要なのじゃないかなと思います」

 人は誰でも、間違いや失敗をする。

 そのサガを受け入れた上で、常に最善の判断を下せるリーダーシップを、若田は目指していた。

 

P226

 ・・・怒るということは、リーダーシップとして好ましくないのではないか。この問いに対し若田は、怒りを的確に表すことはリーダーに求められる資質の一つだと指摘した。

「怒っているというのを、相手にきちんと伝えるのは非常に重要だと思います。怒りの感情を抱いていることを示すのは、ある意味で危機管理の一つです。もちろんそのときは、解決策の提案をすることを忘れてはなりませんし、発言の仕方も気をつけなければいけません。大声を上げるというのも、避けなければならない。でも、発言のトーンだとか伝える姿勢に、怒りというのは、実は入れても良いものだと思います」

「怒りを発言の中に含めることで、非常に重大な問題であることを示します。いつも怒っていたら、相手もカッとなってしまいますが、仕事の中で、人生の中で、この問題は非常に重要だということはやっぱりある。だから、ここはどうしても今改善しなかったら大きな問題につながるといったケースでは、きちんとその意図をチーム全体に伝えるのは重要です。ただ、言いにくいことかもしれません。さらに仲間の方が言い出せないときもある。だけど、それを代弁するのがリーダーであり、船長であると思いますし、リーダーに要求される資質の一つじゃないでしょうか」

 その一方で若田は、「目立たない」リーダーシップを目指したという。

「気がついたら仕事が終わっていた、という形を理想として目指しました。その実現のためにまず、この仕事は彼に任せられるとか、彼にはちょっと難しいので2人付けようとか、そのミッションにふさわしい人員配置を行いました。なので、メンバー一人一人の能力は、普段の会話などから見極め、きちんと把握していました」

「大切なのはリーダーが活躍することじゃなくて、部下が、チームが、いい仕事をすることです。チームとしていい成果を出していくためには、リーダーがフォロワー(部下)を理解し、そしてフォロワーがリーダーを理解するということが何より重要です」