変えられることに注力する

一瞬で判断する力

若田光一さんの本も読んでみました。
野口聡一さんとはまた、全然違うタイプの方で、いろんな人が集まってこそ、チームとしての力が高まるのだなと思いました。

P163
 自分のコントロールが及ばない国際調整や、大きな慣性とともに、ときに遅々として思うように進んでいかない有人宇宙計画における飛行機会の獲得の難しさなどに、落胆の気持ちを覚えることも、宇宙飛行士としての仕事を続けていくなかで経験する可能性は高い。
 そのようなときに重要なのは、落胆するのではなく、あらためて自分の置かれた状況や立場をきちんと分析して、「今、自分にしかできないことは何か?」「自分に課せられた使命は何か?」を明確にしたうえで、自ら課題を定め、日々を過ごしていくことだと言える。
 人生のなかで、自分ではどうしようもない、自分では動かしようのないことはたくさんある。だからこそ、「自分の努力で変えていける部分」と「自分の力ではどうしようもない部分」を明らかにして線を引いておく。そこを常に意識しながら生活していくと、ネガティブな無力感に引きずられることなく、自分の努力しだいで確実に結果が変わってくることに注力できるようになり、積極的な気持ちを保ちやすくなるはずだ。
 そして、その境界線をしっかり認識することで、自分ではどうすることもできない部分は潔くあきらめることもできる。ただ、その「あきらめる」という意味は決して後ろ向きなことではない。今の自分がただちにコントロール「できる」か「できない」をはっきりさせるのは、「自分が今、努力すべき場所、努力すべき方向」をきちんと認識することでもある。集中すべきことに集中し、無駄なことに執着する時間をなくすわけだ。そうすれば、今、自分が置かれている状況の幸運な部分にもあらためて気づくこともあるだろう。
 ・・・
 人類で初めて宇宙飛行を成し遂げたユーリ・ガガーリンは、次のような言葉を残している。
「明日は何が可能になるだろう。月への移住、火星旅行、小惑星上の科学ステーション、異文明との接触……。今は夢でしかないことも、未来の人びとには当たり前のことになるだろう。だが、こうした遠い惑星探査に我々が参加できないことを落胆することはない。我々の時代にも、幸運はあったのだ。宇宙への第一歩を記すことができたという幸運だ。我々のあとに続く者たちに、この幸運をうらまやしがらせようではないか」
 この言葉は、自分が生まれた時代や環境など、自分をとり巻く状況に感謝し、自分に今、与えられている仕事を果敢に続けていくことの大切さを教えてくれる。・・・