今、この一瞬を楽しく

宇宙飛行士の仕事力 日経プレミアシリーズ

「今、この一瞬を楽しく」、といつも忘れずにいたいものです(^_^;)

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 しかし一見、華やかに見える宇宙飛行士という職業も、実は「一生安泰」ではない。今、世界の有人宇宙開発は転換期を迎えている。・・・
 超難関の選抜試験を経て宇宙飛行士に選ばれても、将来どうなるかはわからない。明日の保証がない中で、次のキャリアを考えながら生きるという点では、他の職業となんら変わらないのだ。
 それなのに、宇宙飛行士たちが常にポジティブに前を向いているのはなぜだろう。「確証は常にない」と野口聡一飛行士は言う。目前に控えていた初飛行がスペースシャトル・コロンビア号の事故で白紙になったとき、「明日宇宙計画が終わってもおかしくない」と感じたという。
 そこで発想を転換した。周囲の状況は何ともしがたいが、自分は変えられる。「自分が今できることに全力を注ぐ」。状況は刻一刻と変わっていくもの。チャンスが来たときに見逃さずつかむことができるのは、実力があり準備が整っている人だけだ。当てにならない先のことを案ずるよりも、目の前の仕事に全力を注ぎ、プロセスを楽しみ、実力を蓄える。その先に明日が見えてくる。
 若田光一飛行士も「毎回、この飛行が最後と思って全力を尽くしてきた」という。「今、この一瞬を楽しく」をモットーに、一人ひとりと過ごす時間を大切に、地道に日々を積み重ねてきた結果が、日本人初のコマンダー誕生につながっている。
 将来が不確実な状況でも希望を持ち、それぞれの目標に向かって、自らを高める努力をひたすら続ける。宇宙という大舞台で活躍する彼らの日々の営みは、実は私たちの日常とかけ離れた特別なものではないのだ。