アドバイスの仕方

信じて根を張れ! 楕円のボールは信じるヤツの前に落ちてくる (単行本)

この辺りも、厳しい環境の中で潰さず育てるために、とても大事だなと思いました。

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 3−4−3というと、何かサッカーのフォーメーションみたいですが、○の子が3割、△が4割、×が3割いるという前提で大きく分けて、該当する選手によってアドバイスを変えています。
 目標を設定したら、それぞれの選手がどう取り組んでいるかを見ています。○の子はさらに上を目指せるようさらに高い目標を設定します。ほめてあげれば、みんなの手本になろうとさらに意欲的になります。
 △はできなかったけれど、やろうとしていた。そういう選手は必ず○になっていきます。そういう子は焦らせないことです。できている部分をほめる。その子の持っているポテンシャルを指摘して、こちらが「認めているんだぞ」ということをきちんと伝えます。
 ×の学生は、グラウンドに来ているのに別のことを考えていることがあります。何か問題があればそこを探りますが、そうでない場合は飽きっぽい子が多いのが特徴。自分のことしか考えてないので、他人の話を聞けません。面倒くさがりやだったり、根気がなくエネルギーを継続させることができないとか、さまざまな要素があります。
 そういった×の選手にはカツを入れます。ただ、「まず、とにかくこれだけやってみよう」と課題をひとつに絞ります。課題を与えすぎないようにします。加えて、気長に待つことも必要です。忘れてはいけないのが、×の子はじつは自己反省をしているということ。現状の自分ではダメだということはよくわかっているのです。
 最近の指導は「ほめる」ということが主流になりつつありますね。叱ることによっても効果はあるのですが、ほめたほうが長続きしますね。・・・
 今の学生は、わかりきっていることを言われると心を閉じます。
「そんなんじゃ、ダメだ」「なんでそんなこともできないんだ」。
 ダメだから困ってる。そんなこともできないから困ってる。本人たちはとうに困っているのです。ですので、できない具体的な理由をできるだけ短く説明します。・・・
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 △の選手を怒ってしまうと、四六時中怒っているような感じになります。×の子にも当然怒りたくなる。そうすると、7割の部員に対して叱ることが多くなります。7割は言うまでもなく過半数ですね。そうなると監督はずーっと怒っているような印象になります。
 ・・・それでは、チーム全体のモチベーションは上がりません。ひとりの選手を1回叱れば、直さなくてはいけない部分をみんなが共有できる空気が大切です。・・・
 叱っても、ほめてもエネルギーは生まれます。ただし、叱られて得たエネルギーは、・・・一瞬の「なにくそ」という刺激から生まれるエネルギーですから、学生が自分で生み出したものとはいえません。指導者に与えられたエネルギーなので、モチベーションを高めることにつながらないのです。
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 効果的なアドバイスをするためには、選手の性格や癖をちゃんとリサーチすること。なおかつ、その時々の精神状態を把握することが大切です。
 プレー中にすぐ感情的になりがちな学生に対しては、「それは違うよ。意地の見せどころなんかじゃないよ」と諭します。気持ちを落ち着かせて退場させます。
 明らかに人の話を聞かず、ただマイペースでやっていく学生は、どこかで柔軟性を持たせてやらなくてはなりません。仲間たちが「おまえ、監督に怒られても仕方ないぞ」と感じている空気をその子に自覚させてから、一対一で話します。コーチから言ってもらうこともあります。
 そうやって、△を○にし、△が×にならないようにして、×をどんどん少なくしていきます。そうすると、自然とチーム全体のモチベーションが上がってきます。・・・
 私は意識してほめることは、あまりやってこなかったのですが、最近は選手によっては意識してほめることもあります。心が弱くなっている子は意識していいところを探してほめます。・・・こちらがちょっとしたことをほめたり「大丈夫、大丈夫。その調子でやれよ」とその子の現状を肯定することです。気持ちに余裕がないとエネルギーがなかなかわいてこないので、自己肯定感を持たせることで余裕が生まれるのです。
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 ・・・子どもの状態や性格を見極めながらアプローチすることが大切です。就任当時から何年か前まで、目の前の結果しか見ていなかったような気がします。それが一番の反省です。私の対応のまずさで、選手が負った心の傷とか、達成感のなさとかは、少なからずあったのではないかと推測します。