肯定の笑い

うたがいの神様 (幻冬舎よしもと文庫)

 肯定の笑いをみんな欲してるのではないか、という視点、すばらしいな~と思いました。

 

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 ・・・今、自分の中で流行ってる遊びがあります。地域によってちょっと遊び方が違うと思いますけど、「じゃんけんぽいぽい、どっち引くの」という遊び。両手でグーチョキパーを出した後、「勝てる」と思うほうを残すのではなくて、「負けない」と思うほうを残すんですよね。そんな高度な判断を、瞬時に子どもの時にやっていたんだと気付いてびっくりしたんですが。この遊びには続きがあって、じゃんけんで勝ったほうが「あんたバカね、ビームフラッシュ!」みたいなことを言ってポーズをとる。負けたほうもその時に自由にポーズを選んで、同じポーズになったら負け。でも、僕としては、そんなポーズが合おうが合うまいがどうだっていいんです。

 じゃんけんの後、勝ったほうが「あんたバカね」と負けたほうに言う。その気持ちは分かるんですが、今の時代、そこで勝者の余裕があってもいいんじゃないですかね、ということです。だから、相手を否定するのではなくて、「あんたバカね」と言った後、普段思っている相手のいいところを言うっていうルールにする。例えばカップルの間でその遊びをやるんだったら、「あんたバカね。でも……いつもありがとう」「あんたバカね。でも……面白いとこが好きよ」と。この遊びを、「しゃべくり007」にゲストで出させてもらった時、出演者みんなでやったんです。ゲラゲラ笑って、ものすごく盛り上がりました。

 でも、これを10年前のテレビ番組でやってたら、「何やってんねん、おまえら」となると思うんです。ツッコミで「とっとと帰ってください」みたいな、スカシの「否定の笑い」がちょっと前までは笑いとしてきてたと思いますから。でも、やっぱり今は世知辛いから、むしろこういう「肯定の笑い」をみんな欲してるのではないでしょうか。この遊びが流行ったら、日本はもっといい国になると思います。「落とす」じゃなくて、「受ける」「認める」。その楽しさを伝えていくというのが、今のバラエティ番組の役割というと大げさですが、今の僕の、大事にしたい気分なんです。