やらないことを決める

小泉放談 (宝島社文庫)

こちらは平松洋子さんとの対談です。
「これはやらない」ということを決める、確かに大事ですね。

P132
平松 ・・・ネガティブに感じられるかもしれないけど、「これはやらない」ということを決めるのって、私は大事な選び方のひとつだと思うんですよね。夢とか「こうなりたい」と設定するのは、ポジティブに見えがちだし、わかりやすく思えるんだけど、「やらない」「選ばない」ということも、実はちゃんと選んでいるし、大変な決意なんじゃないか……と。

小泉 うん。それで意外と、自分の可能性も狭めていないですよね。やらないことを決めているだけで、「これしかやらない」ってわけじゃない。

平松 思うに、自分ひとりだけで決めたり選んだりすることって、たかだかな感じがするんです。逆に、窮屈になるというか。無理やり「これがやりたい」と思い定めなくても、そこは何か、まだわからない大事なものとしてとっておいて、やらないことをまず決めていくと、意外といいものが、結果的に手元に残るのかも。

小泉 ああ……その言葉が響く人、きっといっぱいいる気がします。自分はこれがやりたいんだ!って方向ばかり気持ちが向いちゃうと、そこに行き着いてしまった時、いったい自分はどうなってしまうんだろう?とも思うし。

平松 大事なものはそうそう見えるものではないし、そもそも何だかわからない。ずっとわからないままでもいいんじゃないかと思っているほうが、身体とか頭が開くのかもしれないですね。
・・・
平松 ・・・大人になった今でも、何か起こるたびにしんどい思いをしたりもしますけど、そういう時には「いや、でも」と、思い直すんです。「起こったことは必然だったんだ。だから、すべていいことだ」って。もう、そこは愚直に肯定する。だって「何であんなことをしたのか」「どうしてこんなことが」ってあとで考えても、あまり意味もないですからね。起こったことを、消しゴムで消せるわけでもないし。

小泉 ああ、私も、そうやってひとつずつ不安を潰していった感じです。若い時は本当に自分の手に負えないことが多くて、コントロールするなんて無理だったから、「あれが起こったことによって、私はこれを知った」と、いいほうに取るようにしていました。雨が降ったからそのあとに虹が見えた、みたいに。

平松 反省はするんですけどね。でも、反省より本当は、学習のほうが大事。極端に言えば、反省しなくても学習すれば大丈夫だと信じる(笑)。