台湾のおばあちゃんと、著者のおばあちゃんの一言も、そして著者の姿勢も、いいなぁと心に残りました。
P150
・・・屏東で生まれ育った85歳の鐘黄喜妹(チョンフゥアン・シーメイ)さんのもとへ。夫婦で農業を営んでいたが、旦那さんに先立たれてからもひとりで畑仕事。
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喜妹さんは、「畑は大変だけど楽しいねぇ。毎日畑に行って、神様とお話しして、友達とお茶するの。毎日同じことの繰り返しだけど、神様が見ていてくれるから、長生きできるのね」と、目尻にとろけそうなほど柔和なシワを寄せる。厳しい土地で生きてきた人たちは、神様との距離が近い。戦争で焼け野原になった時代や物が無い時代を生き抜き、言葉少なくも「何も無い日々が楽しい」と穏やかに話す彼女といると、平和を作るのは、自分の在り方なのかと思えてきた。
P174
ばあちゃんのレシピ集めを何のためにやっているのか。もっと広げるためには、ビジネスとして成り立つモデルであることや、拡散されるようなわかりやすさが必要だとたくさんの人たちから言われてきた。しかし、そうやってわかりやすくすることで私たちが失って来たもの、それこそがばあちゃんのレシピに象徴されていると思っている。高らかに主張したりお金や権力ばかり気にするのではなく、さまざまなことを受け入れながら、大切なものを引き継ぎ、絶やすべきは絶やす。そんなことを家庭から実践する。それこそが、言語は違えど出会ったばあちゃんみんなが語る普遍的に重要なことであって、かけがえのない財産であると思えてならない。
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現在88歳で今でもブティックを営み、今年の流行色を教えてくれる私のばあちゃんは言う。「人生はね、なるようにしかならないんだから、好きなことやったらいいよ」。だから頑張らなくていいっていう話ではなくて、人生にはどれだけ頑張ってもどうにもならないことがあるのだから、だったら自分が好きだなと思う方に生きていたらいいし、ダメならちょっと横に脇道を作ればいいということ。このばあちゃんの言葉はいつも私を自然体にしてくれる。
著者の中村優さんがやっているプロジェクトのサイトがありました
YouTubeにもなってました。