脱ニューヨーカーのとんでもなく汚くて、ありえないほど美味しい生活

食べることも愛することも、耕すことから始まる ---脱ニューヨーカーのとんでもなく汚くて、ありえないほど美味しい生活

 先日ご紹介した「世界のおばあちゃんの料理」の訳者紹介のところに、他に訳した本が紹介されていました(有名なものでは「南仏プロヴァンスの木陰から」もありました)。

 その中の一冊です。「食べることも愛することも、耕すことから始まる」という長いタイトルに、いったいどんな本?と興味を持ちました。

 訳者あとがきには、このように書かれています。

(ちなみにCSAは、地域支援型農業の略です)

 

P287

 ・・・すべての問題が複雑に密接に絡み合ったいまの世の中に、みずからの置かれた状況を重ね合わせ、鋭い観察眼と深い洞察力をもって、どうわかりやすく、心にひびくように、自分の言葉で語るか・・・ここに書かれている著者の思い、不安やジレンマ、そして夢はどれも決して、いまの日本の私たちにとって無縁ではない。とくに女性で共感する人は少なくないだろう(土や「農」だけでなく、パートナーとの関係においても)。政治に期待するかわりに、日本中の小さな町や村にマークのコピーをひとりずつ派遣できたら、なんてことを考えたりもした。

 ・・・

 著者のクリスティン・キンボールは一九七一年生まれ。ニューヨーク州中部に育ち、ハーバード大学を卒業している。その後の経歴は本文中に書かれているとおりで、マンハッタンでフリーランスのライターや講師として働くうち、二〇〇二年に「変わり者」の(とはいってもやはり屈指の難関校スワスモア・カレッジを出ている)有機農業生産者マークと知り合って恋に落ち、パートナーとなってニューヨーク州北部のエセックスへ移住、二〇〇四年にCSAの農場を立ちあげた。

 その経緯を回想録としてまとめたのが本書(原題はThe Dirty Life:On Farming,Food,and Love)で、二〇一〇年にスクリプナー社より刊行された。時代を超越したライフスタイル、「食」、「農」のありかたと、いっぷう変わったロマンス、そして洗練されたユーモアあふれる軽妙な語り口が多くの読者を魅了し、アマゾンや・・・でも五つ星レビューがいまなお増え続けている。